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臨床内科
だいじょうぶだよ―ぼくのおばあちゃん―

個数:
だいじょうぶだよ
―ぼくのおばあちゃん―

[ 作 ] 長谷川和夫
[ 絵 ] 池田げんえい
[ 発行年 ] 2018年10月15日
[ 分類 ] 介護・福祉 絵本
[ 仕様 ] A4変形判・24頁
[ 定価 ] 本体1,200円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-47-5
[ 主な内容 ]
●「パーソンセンタード ケアの理念をこどもたちにやさしく伝えたい」という作者の思いが詰まった絵本。


絵本に寄せて

 このお話は、私の家で何十年も前に実際に起きた出来事をモチーフにしています。
 認知症になると、約束したことを忘れてしまったり、道がわからなくなって迷子になったり、一緒に暮らしている家族の顔がわからなくなったりすることがあります。時にはイライラして怒ったり、泣いたりすることもあります。
 でも、そんなときこそ、家族や周りの皆さんは、その人の目を見て、微笑んで、寄り添って、ゆっくり話を聞いてあげてください。優しく手を握ってあげてください。きっと、安心して笑顔が戻ってきます。
 多くの人が長生きをするようになって、認知症の人も増えてくることが予測されます。家族の皆さんだけでなく、これからは地域の人たちと共に、認知症の人が安心して暮らせるよう、絆を大切にした社会を目指していきたいものです。
長谷川 和夫

大地震から認知症高齢者を守れ!!

個数:
大地震から認知症高齢者を守れ!!
―小規模介護事業所の実体験から―

[ 編著 ] 高橋恵子 中村考一
[ 発行年 ] 2018年6月1日
[ 分類 ] 介護・福祉
[ 仕様 ] B5判・111頁
[ 定価 ] 本体1,800円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-43-7
[ 主な内容 ]
●熊本地震の実体験から、すべての介護サービス事業者に向けたメッセージ。
●災害時に何ができて何ができないか、求められる支援とは何か。実体験から学ぶ医療従事者必携のテキスト。
●マニュアル作成や職場研修にも最適!!


「はじめに」にかえて 震災を体験して改めて思うこと

 3.11東日本大震災、4.16熊本地震、この両日、私は、一生忘れられない日になりました。東日本大震災では、岩手の友人の事業所が被災して、3月22日に熊本からワゴン車で必死に駆けつけた、いわば支援する側の立場でした。しかし、一面の海底の泥に埋まった果てしない瓦礫を見て、いったい、自分たちに何ができるのだろうと呆然と立ちすくんだことを覚えています。その後、何度か岩手に支援のため、物資などを持参しましたが、自分たちは九州からの強行軍で、人手不足に苦しむ事業所に1週間スタッフ1名を出すのがやっとでした。
 そして、熊本地震は起きました。
 東日本大震災の支援後、帰熊すると桜が満開で、あちこちで花見を楽しむ様子がみられ、違和感を抱きながらも日常は過ぎ去っていきました。あのとき、誰が熊本でも、このような巨大地震が起きることを予測できたでしょうか?
 いえ、実は予測はあったのです。2015年、地震研究者は、九州に潜む断層の危険性や地面の見えないうねりを報告していました。しかし、熊本の現地では、災害に対し、あまりに無関心だったのです。
 あのとき、もっとみんなが意識していたら、事はここまで大きくならなかったのではないでしょうか? 震災による死者の数は、もっと少なかったのではないでしょうか? 皆さんの地域では、備えはできているのでしょうか?
 不思議なことに、熊本地震は自分たちの事業所、自分たちの地域に起きた大変な出来事であり、激震と指定されるほどの災害であったのに、私たちの記憶は薄ぼんやりとしています。心理の先生方に聞くと、「PTSDではないか」と言われます。日常に適応するために、私たちの心が震災の記憶を忘れさせようとしています。また、震災から半年後、熊本で被災した多くの県民が、うつなどの病も発症しました。
 熊本地震の体験は、このままそっとしておけば静かに風化していきます。風化とは、被災していない他者が、その気持ちもわからず、気にもとめなくなることだと思っていましたが、そうではなかったのです。被災した自分たちの心が風化を促進していくのだと今、気がつきました。
 そこで改めて、あのときの災害の怖さや、災害支援の素晴らしさを思い起こし、熊本から発信する必要を感じました。私たちには災害時に支えてくれた仲間がいます。その方々にもボランティアで書籍化への協力を求めました。貴重な資料として、フェイスブックに記した内容をもとに記憶を繰り、認知症の人を支えるケア者・地域住民として、必死に暮らしてきた日常とその気づきを皆さんに投げかけたいと思いました。さらに、支援者の立場からの示唆やどこでも使えるマニュアルも考えました。災害は、明日、皆さんの職場で起きることかも知れません。実際、日本の地質や地域の災害の歴史を辿れば、それは、自分たちのこととして、きっとご理解頂けるだろうと思います。この本を、特に現場経験の少ない若手スタッフの皆さんにもご紹介ください。
 まず、災害への備え、どうか間に合いますようにと、心から願っています。
  平成30年5月吉日
高橋 恵子


おわりに

 熊本地震の支援にあたって、私は被災した人や現地で支援をする人のサポートとなるようインターネットなどを利用し、情報を発信しました。その際に「物資は何を、どのように持っていけばいいか」「物資を運ぶ人の心がまえとは何か」「コーディネーターは、被災した人や支援者をどのように受け止められるか」といった具体的な情報がほしかったのですが、すぐには入手できませんでした。本書がそういった災害時の高齢者施設等の支援のための知識を得る手段の1つとして役立てられれば幸いです。
 災害時の状況を自分のこととしてリアルにイメージしたことがあるかどうかは行動のスピードや質を左右します。ここまで読んで頂いた読者の皆様には、被災した人、支援した人の体験を肌で感じて頂けたと思います。高橋さんはじめ被災された方々にとっては、一度でも体験したくない、そして思い出したくない経験だったはずですが、それを風化しないよう形にできたことは意義深いことだと思います。
 読者の皆様にとって、災害時にどのように行動すればよいかを考え、備えるツールとして、ご活用頂けることを祈念します。そしてこれからも、郷里・熊本の復興を応援していきたいと思います。
 最後に、このような機会をくださったぱーそん書房の山本社長にも感謝申し上げます。
  平成30年5月吉日
中村 考一


目次


1 熊本地震とは?
2 熊本地震 災害の実態


 1.緊急段階
 2.応急段階
 3.復旧・復興
 4.予防段階

  インタビュー 若手スタッフ2人が経験した
              グループホーム震災当日
  回想 発災初日、私は台湾にいた!!
  ■災害時、認知症の人を支えるために必要な
             小規模事業所管理者の心得
  コラム 震災から1ヵ月、小規模多機能ホームの状況


3 事業所側の自然災害への備え


  コラム 厚生労働省現地対策本部から熊本の皆様へ


4 震災の支援とフェーズ






5 支援に向かう側からの視点


 1.DCATの活動
 2.日本ホスピス・在宅ケア研究会の活動

  ■緊急時DCATによる熊本支援結果報告
  インタビュー 災害支援活動に心を寄せて
  コラム 震災経験者として思うこと


6 小規模事業所への災害支援活動の心得
7 災害時のコミュニケーションツール―SNSは
              何をもたらしたか―
8 被災者と支援者をつなげるネットワーキング
                   の必要性
9 災害時のフェーズとケアの在り方―主に
       ストレスマネジメントの観点から―
10 復興支援ふれあい活動


 1.避難所カフェ「ふれあいホームほたる」
 2.小規模多機能ホーム「ほたる」の土壁復旧
その人を中心にした認知症ケア

個数:
みんなで学ぼう
その人を中心にした認知症ケア

[ 共著 ] 長谷川和夫 中村考一
[ 発行年 ] 2016年5月8日
[ 分類 ] 介護 老人看護 家庭医学
[ 仕様 ] A5判・104頁
[ 定価 ] 本体1,500円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-33-8
[ 主な内容 ]
●“その人を中心にしたケア”とはどういうケアなのか。
●現場で起こりがちな問題とそのケアについて、43の事例を挙げながら介護者の視点で学ぶ実践本。
●ケア職のスキルアップに役立ちます。


はじめに

 認知症ケアでは、認知症の人のその人らしさを大切にしたケアの「パーソンセンタード ケア」が重要であるという認識が一般的に普及しています。これは、Tom Kidwoodによって提唱された認知症ケアの考え方で、日本には、本書の著者であり、長谷川式認知症評価スケールを開発された長谷川和夫先生によって紹介されました。
 認知症の人のその人らしさを大切にするといってもなかなか難しいものです。人は一人ひとりからだも感じ方も違いますので、同じ出来事を経験しても、ある人は喜び、ある人は怒るかも知れません。「真面目ですね」と言われて喜ぶ人もいれば、それが皮肉に聞こえてしまう場合もあります。その人にはなれない、その人と同じように感じることはできない。でも、それでもその人らしさを大切にしながら、認知症の人にとって役に立つケアをしようとするときにはどうすればいいのか。難しい問題です。
 また、認知症の人はそれまでの人生の中で多くの物事を経験し、多様な考え方・感じ方・価値観をもっています。加えて、認知症によって生じる障害も人それぞれであり、さらに認知症は進行します。そのため、ある認知症の人に行ったケアが、別の認知症の人に有効であるとは限りません。例えば、近所のスーパーに買い物に行った際に同じものをいくつも買って帰って来る人が、「買わないものリスト」を持って行くと、それを買わずに帰って来られるようになる場合がありますが、この人には有効でも、別の認知症の人は「買わないものリスト」を見るのを忘れるかも知れません。また、認知症は進行しますので、同じ人でも、1週間後に同じように「買わないものリスト」を活用できるとは限りません。そのため、認知症の人をよく観察し、その人に合わせた個別ケアをすることが重要なのです。しかし、「認知症ケアは個別ケアだから認知症ケアについて一般論を勉強するのは意味がない」ということではありません。そのような臨機応変な個別ケアをできるようになるためには、いろいろな症状をきちんと理解したうえで、認知症の人の状態を見極められないといけませんし、標準的なケアの考え方を知っておくことで、個別ケアが考えやすくなります。先の例でいくと、「買わないものリストを見そびれてしまったのはなぜだろう」と考えれば、「レジのスタッフに買わないものリストを見るように声をかけてもらおう」といった発想が生まれるかも知れません。このように、基準となるケアの「引き出し」が1つあると、それをもとに応用が利くようになり「引き出し」を増やしていくことができます。新しい知識を得ながら、知識を応用する経験を何度も繰り返す中で徐々に専門職としての専門性が高まっていくのです。
 本書は、現場で起こりがちな認知症の人にとっての問題とそのケアについて、一般的な考え方を事例とともにまとめました。前述のとおり一般論ですので、認知症ケアに携わり始めた方は、まず、自分自身の介護技術を高めるための基準として本書を参考にしつつ、実践を始めてみてください。そして、紹介した視点や考え方だけでは十分解決できたと言いにくいと感じた場合には、自分自身の成長を喜びつつ実践を振り返り、本書にどのような知識・技術が追加できるかを考えてスキルアップの材料にして頂ければ著者として何より嬉しいことです。
  平成28年4月吉日
中村考一


目次


認知症のケア―その人を中心にしたケア


食事・排泄・入浴のケア

  1.食事を始めてもすぐに止まってしまいます
  ●認知症の中核症状とは
  2.三食しっかり食べているのに「食べていない」と言うので
   どう対応していいか困っています
  3.食事を準備して出かけたのに食べてくれませんでした
  ●BPSDとは
  ●BPSD発生のメカニズムとは
  4.「食べたくない」と言って食事をしなくなりました。
   どうしたらいいでしょうか
  5.食べられないものを口に入れるので困っています
  ●失認とは
  6.お風呂に誘っても断られてしまいます。
   どうしたら入ってもらえますか
  ●記憶の分類とは
  エッセイ 認知症ケアの心に向けて
  7.お風呂に入るときに、いつも不安そうで怖そうに
   しています。どうしてですか
  ●注意機能障害とは
  8.トイレ以外の場所で排泄することがあります。
   どうすればいいでしょうか
  ●見当識障害とは

歩行・移動のケア

  9.歩行機能が低下しているのに立ち上がろうとして危険
   です
  10.いつも歩き続けています。本人の自由にしてもらって
   いるという意味ではいいですか
  11.自宅にいるのに「家に帰りたい」と言います。
   どうすればいいでしょうか
  12.「家に帰りたい」といつも言われ、それに対応できずに
   困っています

介護拒否・繰り返しのある人へのケア

  13.1日中、机を叩いています。止めるように言っても止め
   ません
  14.トイレ以外に部屋から出なくて心配です
  15.1日中、大きな声で叫んでいます。周りの利用者もうん
   ざりしています
  16.頻繁にトイレ介助を求めるのですが、排泄がない場合
   もあって大変です
  17.「薬をください」と何度も繰り返します
  18.他人の服を自分の服だと言って困っています
  19.家族に何度も電話したがります。家族も困っています
  20.スタッフは嘘をついてもいいのでしょうか
  21.薬を勧めても飲んでくれません
  22.夜起きて、家中の照明を点けて回っています。どうして
   でしょうか
  23.介護を拒否し、叩いたりつねったりされます
  24.デイサービスへの送迎がスムーズにいきません。
   いい方法はないでしょうか
  25.「あなたが財布盗ったんでしょ」といつも責められて気が
   滅入ります




IADLのケア

  26.鍋を焦がすことが増えてきました。在宅生活が続けられ
   るか心配です
  ●実行機能障害とは
  27.洗濯物を干すのが難しくなってきました
  ●失行とは
  28.ゴミ出しがうまくできません
  29.高額の商品を購入しているようです
  30.知らない間に外に出て行って、警察に保護されてしまい
   ました

疾患を理解したうえでのケア

  31.レビー小体型認知症と診断されました。どのような点に
   注意が必要でしょうか
  32.前頭側頭型認知症の人が生活に馴染めず困っています
  33.コンビニから勝手に物を持ってきてしまいます

認知症の人同士の関係支援

  34.認知症の人同士の関係がこじれているようです。
   うまく対応する方法はないでしょうか

家族支援

  35.あることないこと噂をして困ります
  36.夫が妻に暴力を振るっています
  37.家族の面会が少ないように思います。もっと来てもらえ
   るように声をかけたいのですが
  38.家族から拘束してほしいと求められます
  39.入浴介助の際、数ヵ所にあざを見つけました。虐待かも
   知れません。どうすればいいでしょうか

連  携

  40.スタッフに認知症の人本位のケアをするように伝えます
   が、なかなか伝わりません
  41.スタッフが教えたことしかできません
  42.医師に相談に行ったところ、「診断に口出しするな」と厳
   しく指導されました。どうしてですか
  エッセイ “僕にはメロディーがない”
  43.スタッフ同士で目指しているものにズレがあるようです。
   カンファレンスもスムーズに進みません

認知症 知りたいこと百科

個数:
Q&A介護ガイド
認知症 知りたいこと百科
―毎日、悩んで、迷ったときに―

[ 共著 ] 須貝佑一・竹中星郎・頼富淳子
[ 発行年 ] 2016年3月1日
[ 分類 ] 介護 老人看護 家庭医学
[ 仕様 ] A5判・201頁
[ 定価 ] 本体1,800円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-32-1
[ 主な内容 ]
●診療場面や介護相談で経験した実例をもとに120余の設問に答える最新百科!!
●読者の理解を助けるまめ知識も豊富に掲載!!
●やさしく親しみやすい文章が魅力!!
●認知症の人の進行に合わせたガイドブック。介護家族はもちろん、ケア専門職にも役立つ座右の書!!


この本をお読みになる方へ

 認知症の人を介護している人たちからよく聞かれる声は「自分の人生がなくなるようで…」「共感してくれる人がいない」「どうしてよいかわからない」といった不安と当惑です。認知症は年を追うごとに進行します。「忘れる」「わからない」「できない」ことのほかに行動の異常や精神の変調が加わってきます。その認知症の人と一緒に生活をする介護者にとっては毎日がハラハラドキドキの連続かも知れません。認知症の当事者も介護する人もです。
 今、認知症460万人時代から2025年には730万人時代を迎えようとしています。認知症施策では「認知症になっても安心して暮らせる時代」を模索しています。では、どうしたら安心できるのか。私たちは考えました。ちょうど新米の母親が0歳児から13歳になるまでの子育て中にぶつかる不安と当惑を「育児の百科」を紐解いて乗り切っていく姿と重なるのではないかと。「育児の百科」には医療から子育ての知恵、経験がいっぱい詰まっています。0歳児から始まり年齢に応じてガイドします。それと同じように、認知症の人の進行に合わせてガイドできないか、という発想からこの本が生まれました。
 多くの介護者にとって認知症の人を抱えるのは初めての経験です。認知症かどうか診てほしい、という始まりの頃から1、2年もすると、何度も同じことを聞かれて介護者が疲れ果てる、夜起き出して介護者が起こされる等々、進行するにつれて毎日新しい問題に直面します。不安を抱えこの先どうすればいいのか迷うのは当然です。
 でも、安心してください。認知症の人が460万人いれば介護者も460万人はいるのです。既に介護を経験し終えた人を加えるとそれ以上になるでしょう。それぞれが皆さんと同じ困難に直面し、なんとか乗り切ってきています。その介護経験と知恵を集めてまとめたものがこの本です。よくある質問や疑問に答える形でわかりやすく解説してあります。認知症専門医が解説する医療の知識もたくさん入っています。認知症の人と向き合って困ったとき、迷ったとき、この本を開いて解決のヒントを見つけてください。きっと安心できるよい知恵が浮かぶでしょう。
 認知症の人と毎日を安心して暮らせるように。それがこの本を書いた私たちの願いです。
 平成28年3月吉日
著者代表 須貝佑一


目次


認知症の始まりの頃


◆医療と薬

  Q 1.認知症になりやすい人というのがありますか。
  Q 2.認知症の初期はどうしたらわかりますか。
  Q 3.認知症かも知れないと思ったらどこへかかればいい
      でしょうか。
  Q 4.認知症だと思って医者へ連れて行ったら、頭のMRI
      は年齢相応で異常はないと言われました。どう考え
      たらいいのでしょうか。
  Q 5.認知症を発症前に診断することはできないのですか。
  Q 6.「俺はどこも悪くない」と言って医者にかかろうとし
      ません。どうやって病院へ連れて行ったらよいでしょう。
  Q 7.アルツハイマー病という診断を受けました。認知症
      とどう違うのですか。
  Q 8.自分も忘れっぽくなったのですが認知症になるので
      しょうか。
  Q 9.認知症と食事の習慣は関係がありますか。
  Q 10.アルツハイマー病は遺伝しますか。
  Q 11.今は認知症の症状はありませんが、両親が認知症
      なので今から薬を飲んでおくことは予防になりますか。
  Q 12.「お腹が痛い、足が痺れる」と大騒ぎしますが、病院
      では何もないと言われて治療してくれません。家族
      はどう対応したらいいのでしょうか。
  Q 13.自分で薬を管理しているのですが、飲み忘れたり、
      飲み過ぎたり、同じような薬をいろいろな病院や
      薬局でもらって来てしまいます。心配になり、家族
      でみようとすると、興奮して怒り出し、渡してくれ
      ません。
  Q 14.認知症の薬で症状が悪化することはありますか。
  Q 15.認知症に効くサプリメントはあるのでしょうか。
  Q 16.「軽度認知障害」と言われました。認知症とは違いま
      すか。
  Q 17.アルツハイマー病と言われました。本人に知らせる
      べきでしょうか。
  Q 18.認知症を診てもらえるという「認知症疾患医療センタ
      ー」とは、どういうところですか。

◆精神変調と言動

  Q 19.明るく活動的な人でしたが、近頃無気力になり趣味
      の習い事も理由をつけて休み、テレビや新聞も見な
      くなりました。
  Q 20.「もう死にたい」とよく口にしますが、大丈夫でしょうか。
  Q 21.「誰かに聞かれるといけないから」と、ひそひそ話を
      するようになりました。認知症でしょうか。
  Q 22.最近、多弁になり、いろんな人に作り話をしています。
      寂しいのでしょうか。
  Q 23.お金や通帳を冷蔵庫や畳の隙間など変なところに隠
      すようになりました。
  Q 24.気前よく人にお金をあげたり高額な物を契約してし
      まいます。どうすればいいでしょうか。
  Q 25.外では「穏やかで楽しいお年寄り」と言われています
      が、家では性格が変わって気難しくて暴力的です。
      どちらが本当なのでしょうか。家族の対応に問題が
      あるのでしょうか。
  Q 26.「財布や預金通帳がない」と言って大騒ぎしたり、「嫁
      がセーターを盗った」と交番に届けたり、近所の人に
      言いふらすので困っています。
  Q 27.「毒が入っている」と言ってせっかく用意した食事に手
      をつけません。
  Q 28.「外に男がいる、浮気している」と言って責めますが、
      私には身に覚えがありません。“色ボケ”でしょうか。
      どうすればいいのでしょうか。

◆日常生活

  Q 29.昔のことは覚えているのに、数分前のことを忘れて
      しまうのはなぜでしょうか。
  Q 30.認知症といわれていますが、まだ運転をしています。
      運転は止めさせるべきでしょうか。
  Q 31.夫はまだ54歳なのに認知症になっています。仕事は
      続けさせたいのですが。
  Q 32.母は通信販売などで不要な買い物をしています。
      止められるよい方法はありますか。
  Q 33.お風呂を勧めると「昨日入ったからいい」と言って入
      りません。もう1ヵ月以上になります。
  Q 34.調理に時間がかかり、献立はいつも味噌汁とアジの
      干物です。味つけも変ですが、本人は平気で食べ
      ています。
  Q 35.同じ物を着て着替えようとしません。どう勧めたら
      よいでしょうか。
  Q 36.危ないので台所の火は使わせないようにしましたが。
  Q 37.パンや納豆など同じ物を買ってきてしまうので家に
      物が余ってしまいます。
  Q 38.大した用事もないのに昼夜かまわず電話をします。
  Q 39.冷蔵庫や食器棚に腐った物が置いてあります。
  Q 40.郵便物が紛失したり、かかってきた電話の用件が伝
      わらなくて困ります。
  Q 41.認知症で食べてはいけないものがありますか。
  Q 42.認知症の人でもお酒は飲んでもいいのですか。
  Q 43.糖尿病なのに食事制限が守れません。どうやったら
      いいでしょうか。

◆介護者の思い

  Q 44.約束したことでも「そんなこと知らない」と怒ります。
      どう説明したらいいですか。
  Q 45.家事が難しくなっているので、ヘルパーさんを頼み
      ましたが、「帰って」と言い、中へ入れません。
  Q 46.間違ったことをしているのを見るとつい声を荒げて
      叱ってしまいます。私は優しくないのでしょうか。
  Q 47.一人暮らしの親とは離れているので、年に何度かし
      か帰れません。電話での声は元気です。呆けてほ
      しくないと思っているのですが、どのようにして
      見守りをしたらよいですか。
  Q 48.毎日、日記を書かせてその日の出来事を思い出させ
      るようにするのは効果がありますか。
  Q 49.孫が遊びに来る日に「今日は孫が来るのか」と5分お
      きに聞いたり、デイサービスの日に朝から何度も
      それを確認するので疲れてしまいます。忘れが進
      んだのか心配です。どのように対応したらいいの
      でしょうか。
  Q 50.耳が遠くなったので補聴器を買ったのですが、本
      人は「うるさい、いらない」と言って使いません。
      当人は「困らない」と言いますが、家族は話が通じ
      ないので困っています。
  Q 51.認知症の介護認定はどうしたらよいのでしょうか。
  Q 52.1日のうちでも落ち着いているときと、調子の悪い
      ときがあります。認定調査はどのような時間に設
      定すればよいですか。
  Q 53.認定調査のとき、本人は、実際よりよくみせよう
      として「なんでもできる」と言ったり、頑張って普
      段できないようなことをやってみせたりします。
      普段の様子が正しく伝わるかどうか心配です。
  Q 54.ケアマネジャー(介護支援専門員)の方には、日常で
      困っていることをなんでも相談してよいのですか。


認知症の進む頃


◆医療と薬

  Q 55.認知症の母がいます。アリセプトRという薬を飲ん
      でいても症状が進んでいるようです。別な薬に替
      えてもらえるでしょうか。
  Q 56.認知症が進んで夜寝ません。睡眠薬は使っても大
      丈夫ですか。
  Q 57.認知症の人に急に病気が併発したらどうすればよ
      いでしょうか。
  Q 58.昼夜逆転、徘徊、暴言などがあり、医師からアリ
      セプトRが処方されました。飲んでも症状が落ち
      着きません。どのくらい飲めば落ち着きますか。
  Q 59.「自分はどこも悪くないから」と薬を飲もうとしま
      せん。
  Q 60.肺炎や骨折などの急病のときに病院で診てもらえ
      るか心配です。
  Q 61.認知症が進むと暴れたり、妄想をもつようになる
      といわれているので、これから先が心配です。
  Q 62.怒りっぽく精神症状がひどいので安定剤をもらっ
      ています。却って症状が進行するのが心配です。
  Q 63.認知症の薬の量がだんだん増えていきます。一度
      増やしたらもとに戻せないのですか。
  Q 64.認知症が進み在宅介護が難しくなりました。入院
      または入所できる施設サービスにはどのようなも
      のがありますか。
  Q 65.「認知症サポート医制度」があると聞きましたがど
      んな制度ですか。

◆精神変調と言動

  Q 66.「お父さん遅いわね」と、もう亡くなった夫がいるよ
      うなことを言います。
  Q 67.夕方になると「お世話になりました。家に帰ります」
      と他人行儀に挨拶して、家を出ていこうとします。
      「ここが自分の家だ」と説明しても5分もしないうち
      に同じことを言ってきます。どうしてでしょうか。
  Q 68.「家に帰る」とは生まれた家のことで、子ども時代に
      返ったのだから、その頃の思い出を話してもらう
      と落ち着くといわれますが、本人は「そんなこと忘
      れた」と話に乗ってきません。そういうときにはど
      うすればいいのですか。
  Q 69.毎日同じことを言っても通用するのでしょうか。嘘
      をついてもいいのでしょうか。
  Q 70.昼夜が逆転して、夜は眠らずに起きていて、昼間は
      眠っています。昼間は起こしている方がいいので
      しょうか。
  Q 71.会話をしていてニコニコしていると思っていると「
      何笑っているんだ」と突然怒り出し、びっくりする
      ことがたびたびあります。何か原因があるのでし
      ょうか。

◆日常生活

  Q 72.家でお風呂に入れようとすると抵抗して大騒ぎにな
      ります。
  Q 73.トイレを汚して困っています。自分で始末させた方
      がいいですか。
  Q 74.猫を飼っているのですが、世話ができずに部屋の中
      が猫の糞尿で大変不潔な状態です。猫を里子に出
      そうと相談しても納得してくれません。放ってお
      いた方がいいのでしょうか。
  Q 75.数分おきにトイレに連れて行けと言います。連れて
      行っても排泄はないのです。
  Q 76.石鹸やトイレットペーパーを口に入れてしまうので
      危ないのですが。
  Q 77.隙をみては玄関から出て行こうとします。鍵をかけ
      てはいけませんか。
  Q 78.留守の間、大きい字で張り紙をしておいたのですが、
      用事が通じません。
  Q 79.認知症の人がたくさん食べているのに太らないのは
      なぜですか。
  Q 80.食事をした後でもすぐに「ご飯まだ食べてないから」
      と要求します。
  Q 81.引っ越しや入院は認知症が進んでしまうのでしない
      方がいいと聞きますが。
  Q 82.汚れた下着をしまい込んで、カビが生えてしまいま
      す。
  Q 83.おむつ外しで不潔になるのでつなぎ服を使いました。
      人からはつなぎ服はいけないと言われました。




◆介護者の思い

  Q 84.毎日1人で散歩していますが、道に迷わないかと心配
      です。行き倒れになったらとか、ほかの人たちに迷
      惑をかけるのではないかと気がかりですが、対策が
      あるのでしょうか。
  Q 85.行方不明になったらまず、どうしたらいいでしょう。
  Q 86.プライドが高くて、デイケアのようなお年寄りの集
      まりには行こうとしません。
  Q 87.デイサービスに母と見学に行きましたが、「あんなと
      ころに行きたくない」と行きたがりません。どうし
      たらよいでしょう。
  Q 88.認知症のお年寄りにはグループホームがいいと聞き
      ましたが。
  Q 89. グループホームとはどのような施設なのでしょう
      か。利用するにはどのようにすればいいですか。
  Q 90. 家族が入所施設を選ぶときに何か注意することは
      ありますか。
  Q 91. ショートステイを利用すると認知症が進むのでし
      ょうか。
  Q 92. 親戚の不幸を知らせても大丈夫でしょうか。
  Q 93. 娘の私をお手伝いさんと思っているようです。何
      度言ってもすぐ忘れて悲しくなります。
  Q 94. 「どうしたらいいの」といつも私(主たる介護者)の
      後をついて歩くのでやり切れません。
  Q 95. たまには旅行したいのではと思い、温泉に誘った
      ところ喜んで「行きたい」と言います。家族と一緒に
      旅行に連れて行きたいのですが、かまわないですか。
  Q 96. たまに来る娘や親戚の人には上機嫌でそつなく応
      対するので、日常の大変さがわかってもらえず「世
      話の仕方が悪い」と言われます。
  Q 97. 病気だからと思っても聞き流せないことや排泄の
      失敗などが重なると、ついきつく叱ってしまい自己
      嫌悪に陥ります。
  Q 98. 隣の家からお年寄りの大声で泣くのが聞こえます。
      虐待でしょうか。どこに通報したらよいですか。
  Q 99. 認知症の姑を看ています。若い頃いろいろつらい
      思いをさせられたこともあって複雑な気持ちです。
      介護経験のある友人は「介護者の会」の入会を勧めま
      すが、「知らない人には話したくない、知っている
      人には聞かれたくない」という気持ちがあり揺れて
      います。
  Q 100.在宅で看るのが限界ですが、施設に預けるとなると
      後ろめたさや寂しさを感じて決心がつきません。
  Q 101.訪問介護では何人ものヘルパーが入れ代わり立ち代
      わり入ると聞きますが、混乱しないでしょうか。
  Q 102.母は認知症ですが、母の性格に合うような静かでこ
      じんまりとした施設に入ってもらいたいと思います。
      家族が選ぶことはできますか。
  Q 103.施設の入居者とよく喧嘩をして迷惑をかけているよ
      うです。あまりひどいときには退所させられるので
      しょうか。その後は別の施設を紹介してもらえます
      か。
  Q 104.ショートステイを利用したら疥癬に感染してしまい
      ました。「治るまでデイサービスは休んでほしい」と言
      われて困っています。


認知症が重くなった時期


◆医療と薬

  Q 105.認知症が重くなったときの薬はありますか。
  Q 106.薬を飲ませるのが難しくなっています。
  Q 107.薬を飲ませるようになってから、口をもぐもぐさ
      せる、よだれが出る、舌が出る、午前中ボーッと
      している、足がもつれるなどが目立つようになり
      ました。とても気になるのですが。
  Q 108.常に足がピクピクひとりでに動きます。
  Q 109.たびたび痙攣が起きるようになりましたが、救急
      車を呼ぶべきでしょうか。

◆精神変調と言動

  Q 110.テレビに映っている人にお辞儀したり、アナウン
      サーの話に受け答えするようになりました。
  Q 111.毎朝、洗面所の鏡の前に行って、鏡に映る自分の
      姿に話しかけたり、挨拶するのはなぜでしょうか。
  Q 112.暴力行為がひどいので、どこでもショートステイ
      を断られてしまいます。
  Q 113.デイサービスを利用して認知症の夫を預けていま
      す。施設の連絡帳にたびたび「職員に手を上げます」
      「廊下に放尿がありました」といった様子が書かれ
      て帰って来ます。施設の方々に申し訳ないので預
      けるのを止めようと思っていますが。
  Q 114.昼も夜も大声を出して何度も人を呼ぶので介護す
      る方が疲れます。
  Q 115.夜中に急に起き出して「空襲だ、火事だ」とか「ど
      ろぼーがいる」と大声を出して興奮し、落ち着き
      なく動き回ります。
  Q 116.大便を手でこねたり、衣類や壁などに塗りたくる
      ので困っています。対策はあるのでしょうか。

◆日常生活

  Q 117.食べ物をよくむせるようになりました。
  Q 118.食べた物を口に入れたまま、いつまでたっても飲
      み込もうとしないので困っています。
  Q 119.口から食べ物を摂れなくなりました。これからど
      うしたらよいでしょう。
  Q 120.最近、冷蔵庫にある肉や大根やネギなどの野菜を、
      なまのまま食べてしまいます。またバターを1ケー
      ス食べたり、お歳暮で届いたミカンを1箱食べてし
      まいました。身体に害はないのでしょうか。
  Q 121.穏やかな表情で眠っている時間が長くなりました。
      そっと寝かせておく方がいいのでしょうか。

◆介護者の思い

  Q 122.言葉も出なくなり、無表情で絶えず大声で叫ぶな
      ど、ほとんどコミュニケーションがとれません。
      意思疎通を図る手立てはないものでしょうか。
  Q 123.もし、介護する人が急にいなくなってしまったら
      どうすればいいですか。
  Q 124.「成年後見制度」とはなんでしょうか。
  Q 125.後見、保佐、補助の意味を教えてください。
  Q 126.アルツハイマー病の「終末医療」はどのように行わ
      れるのでしょうか。


知っておきたいまめ知識


●認知症であるための3つの条件
●アルツハイマー型認知症とは
●アルツハイマー型認知症の原因
●アミロイドβはどこから生まれるのか?
●アルツハイマー型認知症の診断
●アルツハイマー型認知症の初期症状
●高齢者のうつ病
●血管性認知症とは
●血管性認知症の原因
●盗られ妄想
●血管性認知症の症状
●血管性認知症の診断
●血管性認知症の治療
●在宅生活を支える福祉サービスなどについて
●介護保険でヘルパーさんを頼むには
●その他の認知症:レビー小体型認知症
●その他の認知症:前頭側頭型認知症
●その他の認知症:クロイツフェルト・ヤコブ病
●健康を保つためには、介護者の目が重要です
●その他の認知症:慢性硬膜下血腫
●認知症を起こしやすい身体疾患
●認知症・精神症状を起こしやすい薬物
●補聴器―心が通う会話のために
●在宅支援機関・団体(1)
●在宅支援機関・団体(2)
●薬物療法
●嗜銀顆粒性認知症が意外に多い
●アルツハイマー型認知症の中期症状
●抗精神病薬の効用
●知っていてほしい身体の病気
●認知症の人とのコミュニケーション
●褥瘡(床ずれ)
●「GPS」で徘徊高齢者の現在位置を知る
●デイサービス、デイケアとは何か
●骨折、外傷―寝たきりの要因になりやすい
●薬についての注意点
●アルツハイマー型認知症の末期症状
●白内障―早期発見が決め手です
●鏡現象
●弄便はなぜ起こるか
●肺炎―認知症の人に多い
●肺炎球菌ワクチン
●なかなか水分を摂ってくれない
●口腔ケア―認知症の人のQOL向上のために
●言葉が失われてもコミュニケーションはできる
●精神鑑定
ERドクター便利帳 輸液再確認!!

個数:
ERドクター便利帳
輸液再確認!!

[ 編集 ] 三宅康史
[ 発行年 ] 2015年10月5日
[ 分類 ] 輸液 救命・救急医学
[ 仕様 ] 新書判・305頁
[ 定価 ] 本体2,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-25-3
[ 主な内容 ]
●若手医師・初期研修医・ERナースのための、ポケットサイズの輸液実践本。
●簡潔な文章で輸液の基礎を集約。あやふやに覚えていたことを、何度も読んでぐらつかない知識に!
●どこから読んでもすぐに役立つ便利帳。どこをみて、何を考え、何をもとに輸液を決定していくのか、その過程とスキームが学べる必携書。


緒言

 この度、ぱーそん書房から、若手の救急医、初期研修医の先生方や救急外来・救命救急センターの看護師の皆さんに、現場でササッと使ってもらうポケットサイズの輸液実践本を上梓致しました。
 まずは、聞き慣れない“ぱーそん書房”ですが、代表の山本さんが平成24年6月に永井書店から独立し設立した出版社です。歴史は浅いですが、結構、救急関連の出版物があります。皆さんも手に取ったことがあるかも知れません。また、本書の「便利帳」という呼称については、特に山本さんのこだわりがあるようです。今回の企画を契機にシリーズ化されるのか!? それも本書の売れ行き次第といったところでしょうか…。
 輸液が予後を左右するような症例があるとすれば、それは経口摂取ができず、必要なものすべてを輸液に頼らざるを得ないような症例です。実のところ、軽症の患者さんでは輸液の内容や投与量を間違えても、患者さん自身の腎機能やホルモンの働き、必要なものをなんとか口から摂りながら、自身のもつ回復力でなんとか治っていってくれます。そのため、受け持った症例に輸液を行う場合、始める前はもちろん、輸液の最中、そして終了後に、今回行った輸液の功罪を評価していって頂きたいのです。その輸液がどのくらい効果を上げたのか、むしろharmfulなことをしていなかったか、常に反芻しながら、その経験を次の症例の糧として頂きたいと思います。
 レベルや必要度に合わせて、どこから読んでもすぐに役立つ便利帳です。ぼろぼろになるまで使って頂ければ、この本の企画・編集・執筆にかかわった1人としてこれに過ぐる喜びはありません。
 平成27年9月吉日
三宅 康史


目次


最初に読む! 基本初期輸液


1 輸液を始める前に読んでほしい!
  体内の水と電解質の生理学

  Ⅰ 輸液はどこに入っていくのか?
  Ⅱ それでは、血管内(血液or血漿)と間質(組織間)を分けて
    いるのは?
  Ⅲ それでは、細胞内と細胞外を分ける細胞膜の役割は?
  Ⅳ このような定常状態を保つために、毎日われわれ
    人間はどこで水や電解質を失い、それらをどこから
    補充(または再利用)しているのだろうか?

2 基本初期輸液:まず何をつなぐか

  Ⅰ そうなると脱水、体液喪失、それぞれにどのような
    輸液が最適なのであろうか?
  Ⅱ 輸液は脱水補正用の5%ブドウ糖液と、体液喪失
    補正用の細胞外液補充液の2種類だけで足りる?
  Ⅲ 初期輸液とは別に、水、電解質、エネルギーの1日
    必要量(維持量)は実際はどれぐらいになるのか?
  Ⅳ これ以外にもたくさん輸液の種類が輸液・栄養製品
    組成早見表に記載されているが、これらは何?

3 救急専門医の初期輸液

  Ⅰ 何を根拠に輸液戦略を立てるか
   1.水電解質の補給→細胞外液でまず間違いなし
   2.栄養の補給→ブドウ糖だが、まず必要ない
   3.血管の確保→細胞外液でまず間違いなし
   4.病態の治療
  Ⅱ 主訴、現病歴と身体所見から考える輸液戦略
  Ⅲ バイタルサインの回復を目的とする、いわゆる蘇生
    輸液

4 腎臓内科医の初期輸液

  Ⅰ 何を指標に、何を見極めて輸液計画を立てるのか
    (初療患者を通して原則的に)
   1.救急外来における輸液療法の目的
   2.輸液療法の種類
   3.体液量の評価
   4.救急外来での適切な初期輸液
  Ⅱ 水分バランス、電解質、浸透圧、酸塩基平衡異常と
    その補正
   1.酸塩基平衡の異常
   2.ナトリウム代謝異常
   3.カリウム代謝異常


初療直後に読む! 救急疾患別輸液法


1 脱水(体液喪失と水喪失)

  Ⅰ 診断の見極め
   1.高張性脱水
   2.等張性脱水
   3.低張性脱水
  Ⅱ 具体的な疾患と鑑別診断
   1.低Na血症を認めた場合
   2.血管内容量が低下している場合
   3.血管内容量が正常から軽度に増加している場合
   4.水分喪失量増加をきたす疾患(Na正常~高Na血症)
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画 いつ、何に変更するか?
  Ⅳ 「かくれ脱水」、「冬脱水」とは?
   1.かくれ脱水
   2.冬脱水
  Ⅴ 輸液療法からみたその後のフォローアップ

2 心原性ショック(心筋梗塞、心不全)

  Ⅰ 診断の見極め
   1.ショックについて
   2.心原性ショックの定義・病態
   3.心原性ショックの診断
   4.急性心不全の病態把握
  Ⅱ 具体的な疾患と鑑別診断
   1.バイタルサインの確認
   2.病歴聴取と一般身体診察
   3.検査
   4.鑑別診断
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画
  Ⅳ 輸液療法からみたその後のフォローアップ

3 急性腎障害、慢性腎臓病

  Ⅰ 診断の見極め
   1.急性腎障害の定義、疫学、重症度分類
  Ⅱ 具体的な疾患と鑑別診断
   1.急性腎障害の分類と鑑別方法
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画:いつ、何に変更するか
   1.急性腎障害における緊急透析の適応
   2.急性腎障害に対する疾患特異的な治療
   3.急性腎障害に対する支持療法
   4.急性腎障害に対する腎代替療法(血液透析)
  Ⅳ 輸液療法からみたその後のフォローアップ

4 嘔吐・下痢および急性腹症

  Ⅰ 嘔吐を起こす疾患の診断手順と治療
   1.初療時のポイント
   2.問診のポイント
   3.嘔吐患者の輸液治療
  Ⅱ 下痢を起こす疾患の診断手順と治療
   1.下痢のメカニズム
   2.下痢の輸液治療
  Ⅲ 急性腹症を起こす疾患の診断手順と治療
   1.初療時の対応
   2.急性腹症の診断
   3.急性腹症の輸液治療
   4.急性腹症手術と術後管理

5 重症感染症

  Ⅰ 診断の見極め、定義・病態
   1.定義(敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック)
   2.病態
  Ⅱ 具体的な疾患と鑑別診断
   1.具体的な疾患
   2.鑑別診断
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画:いつ、何に変更するか
   1.実際の初療室での動きについて
   2.生理学的アプローチ、EGDTについて
  Ⅳ 輸液療法からみたその後のフォローアップ

6 出血:外傷、消化管出血(吐・下血)

  Ⅰ 病態と診断の見極め
   1.病態
   2.診断
   3.各論
  Ⅱ 具体的な疾患と鑑別診断
   1.外傷
   2.消化管出血
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画:いつ、何に変更するか
   1.初期対応、 全身管理
   2.成分輸血
   3.輸液・輸血療法の注意点
  Ⅳ 輸液療法からみたその後(術前・術後)のフォロー
    アップ
   1.腹部コンパートメント症候群(ACS)
   2.カテコラミンの使用




7 アナフィラキシー

  Ⅰ 診断の見極め
   1.診断
   2.機序と誘因
   3.リスク因子
   4.アナフィラキシーショック
  Ⅱ 鑑別疾患
  Ⅲ 輸液を含めた治療計画
   1.初期治療
   2.急性期にはどの輸液製剤を、どれだけ投与したら
     いいのか
   3.輸液投与量の指標について
   4.輸液療法の限界と、その他の治療方法について
  Ⅳ 輸液療法からみたその後のフォローアップ
   1.二相性反応について
   2.自己注射型エピネフリン(エピペン)について
   3.運動誘発性アナフィラキシー

8 脳血管障害

  Ⅰ 診断の見極め
  Ⅱ 具体的な疾患の超急性期管理
   1.くも膜下出血(SAH)
   2.脳出血
   3.脳梗塞
  Ⅲ 具体的な疾患の急性期管理
   1.くも膜下出血(SAH)
   2.脳出血
   3.脳梗塞
  Ⅳ 輸液療法からみたその後(亜急性期管理)

9 血糖異常(糖尿病患者の急性代謝失調)

  Ⅰ 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧性
    高血糖症候群(HHS)の病態生理
   1.DKAの病態生理
   2.HHSの病態生理
  Ⅱ DKAとHHSの診断
   1.DKAの診断
   2.HHSの診断
  Ⅲ DKAとHHSの治療
   1.初期輸液
   2.その後の輸液
   3.インスリン投与
   4.電解質補正
   5.原因検索と支持療法
  Ⅳ 低血糖
   1.交感神経症状
   2.中枢神経症状
   3.大脳機能低下
  Ⅴ 乳酸アシドーシス(LA)
  Ⅵ アルコール性ケトアシドーシス(AKA)

10 特殊な病態

  Ⅰ 急性中毒
  Ⅱ 環境障害
   1.熱中症
   2.低体温症
  Ⅲ 特殊な外傷、外因性障害
   1.脊髄損傷
   2.熱傷
   3.溺水
  Ⅳ 終末期

11 高齢者、小児

  Ⅰ 高齢者
   1.生理学的特徴
   2.高齢者の輸液療法の実際
   3.まとめ
  Ⅱ 小児
   1.成人との違い
   2.生理学的特徴
   3.維持輸液
  Ⅲ 小児のショック
   1.ショックの輸液療法の実際
   2.まとめ
  Ⅳ 小児の脱水
   1.基本
   2.輸液の組成・速度
   3.まとめ


一段落したら読む! 輸液エキスパートへの道!


■腎臓内科専門医が見極める腎機能評価と腎障害の程度

  Ⅰ なぜ、輸液に際して腎機能評価が重要なのか
   1.尿浸透圧
   2.輸液による溶質負荷
   3.「CKD患者は高K血症にも低K血症にもなりやすい」
   4.「CKD患者は高Na血症にも低Na血症にもなりやすい」
   5.「CKD患者はアシドーシスにもアルカローシスにも
      なりやすい」
   6.「CKD患者は高血糖にも低血糖にもなりやすい」
   7.「CKD患者の血清Ca/P/Mg値は高値にも低値にも
      なりやすい」
  Ⅱ 腎機能低下時の体液量評価のピットフォール
  Ⅲ 輸液に際しての腎機能評価のピットフォール

■非公式ながらよく使う裏ワザ

  ・冷やしラクテックあります
  ・維持輸液=3号液?
  ・FENaとは
  ・動脈血液ガスと静脈血液ガス
  ・浸透圧脱髄性症候群(ODS)
  ・高Na血症とhypovolemic shockの合併を認める場合
  ・橋中心髄鞘崩壊症(CPM)
  ・Swan-Ganzカテーテルについて
  ・TPTDを用いた循環動態の評価
  ・カテコラミンの選択
  ・入院後の輸液管理
  ・急性腎障害の発症場所と頻度
  ・血清Cr値はGFRが極端に低下しても……
  ・緊急透析を行う可能性がある症例に対しては……
  ・急性腹症術後の輸液のポイント
  ・いつ中心静脈カテーテル(CVC)を留置し、いつ血管収縮薬を
   開始する?
  ・ショック指数を用いるときの注意点
  ・Permissive hypotension, restrictive fluid resuscitation
   という考え方
  ・大動脈遮断バルーン(IABO)
  ・アドレナリンの投与について
  ・原因不明の遷延する意識障害
  ・迷ったときの抗血栓薬の選択
  ・HHSの治療の主体は……
  ・フルマゼニルはベンゾジアゼピンの拮抗薬であるが……
  ・高体温に対していち早く冷却輸液を投与するが……
  ・加温輸液が足らない場合は……
  ・頸髄損傷患者は体温調節機能も低下しているので……
  ・初期の重症度評価において、サウナ内、岩盤浴での
   熱傷は……
  ・淡水による溺水で、低Naに陥るような……
  ・治療撤退と現状維持を識別することそのものが……
  ・小児の静脈路確保
  ・経口補液療法

こう読む 認知症 原因診断のための脳画像

個数:
こう読む
認知症 原因診断のための脳画像

[ 編集 ] 松田博史・朝田 隆
[ 発行年 ] 2015年10月5日
[ 分類 ] 精神医学 脳神経外科学
[ 仕様 ] B5判・362頁
[ 定価 ] 本体9,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-26-0
[ 主な内容 ]
●精神科医や神経内科医と脳外科医による二大別の診断流儀をこの1冊に集約。
●Alzheimer病をはじめ数多くの認知症をきたす原因疾患別の臨床的特徴と画像所見による鑑別診断の見方、治療の進め方を網羅。
●認知症診療において身につけておきたい知識や判断力・見極め方を学ぶための必携の書。


巻頭言

 高齢化の進む本邦では、高齢者の約4人に1人が認知症またはその予備群だとされる。今後さらに高齢化が進展するので、2025年には約700万人が認知症になると予測され大きな社会問題となっている。この状況下において、認知症をより早期に、かつ正確に診断することがますます重要になってきている。この目的で客観的な情報を提供しうる画像診断の機能は進化し、その役割はより一層大きくなっている。迅速な診断が可能なX線CT、詳細な脳構造はもとより神経線維連絡や機能連結さらには脳血流までも測定できるようになったMRI、そしてSPECTによって脳血流だけでなくドパミントランスポータの測定も可能になった。まだ保険収載はされていないが、PETによって脳の糖代謝やAlzheimer病(AD)の原因とされるアミロイドβ蛋白、さらにはタウ蛋白も描出できるようになった。このように画像診断およびその解析手法の最近の進歩には目覚ましいものがある。しかし認知症診療で留意すべき点は、これらの画像診断はあくまでも補助診断として位置づけられるものであり、認知症診断の基本は面談や観察によって臨床症状を正確に把握するところにある。この前提に立って、画像診断は治療法も含めた総合的な診療体系に組み込まれるべきものである。
 執筆者の先生方は、臨床の第一線で活躍しておられる専門家であり、特に新進気鋭の先生方が中心になっている。そして本書は上述したような最新の画像診断の実践を取り扱っている。しかし画像に偏ることなく、ADをはじめとして数多くの認知症をきたす原因疾患別の臨床的特徴と画像所見による鑑別診断の見方、さらには治療の進め方までも網羅することを目指して制作された。つまり認知症診療において身につけなければならない知識・判断力・見極め方などを学ぶための必携の書となり、専門知識の幅を広げることを目的とした。今日認知症にかかわる医師は、神経内科医や精神科医など内科系の医師と脳外科医師に二大別される。また両者において認知症診断の流儀は多少なりとも異なる。本書はそのような差異を踏まえて、精神科・神経内科・脳神経外科・放射線科などの専門医といった実地医家ばかりでなく、研修医や医学生、さらにはメディカルスタッフの方も読者として想定した。編者の意図を反映し、読者にとって有益な書となれば無上の幸である。
 最後に、本書出版にあたって多大な御尽力を頂いたぱーそん書房 山本美惠子氏に心から御礼申し上げます。
 2015年10月吉日
松田博史
朝田 隆


目次


Ⅰ.総 論


1 認知症とは

  1.認知症とは
  2.どんなケースで認知症を考えるべきか
  3.認知症の疫学
  4.認知症の症状

2 内科系での認知症診断の流れ

  1.認知症の医科学的診断プロセス
  2.認知症の実際的な診断過程

3 脳外科での認知症診断の流れ

  1.脳神経外科診療と物忘れ外来
  2.脳神経外科メモリークリニックにおける工夫

4 画像診断に必要な脳の解剖

  1.海馬領域
  2.帯状回後部および楔前部
  3.頭頂連合野
  4.中脳被蓋部
  5.迂回回

5 画像診断

  1.認知症における画像診断の流れとそれぞれの特徴
  2.画像統計解析法の種類と特徴
  3.画像診断の進歩


Ⅱ.各 論


  すべての項目は
   1.原因疾患の概念と症状の特徴、経過、治療
   2.画像所見の特徴、見極め方
   3.治療の経過で見逃してはならない所見、
     チェックポイント、画像読影のコツ
  で構成されています。


1 Alzheimer病
2 晩発性と比較した若年性Alzheimer病の特徴
3 Alzheimer病による軽度認知障害
4 脳アミロイドアンギオパチー



5 神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症
6 神経核内封入体病/エオジン好性核内封入体病
7 後部皮質萎縮症
8 血管性認知症
9 Lewy小体型認知症、認知症を伴うParkinson病
10 前頭側頭型認知症
11 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症
12 神経原線維変化型老年期認知症
13 嗜銀顆粒性認知症
14 正常圧水頭症
15 慢性硬膜下血腫
16 プリオン病(Creutzfeldt-Jakob病)
17 大脳皮質基底核変性症
18 Huntington病
19 HIV感染症
20 進行性核上性麻痺
21 神経梅毒
22 意味性認知症
23 進行性非流暢性失語
24 アルコール性認知症
25 脳 炎
26 CADASIL、CARASIL
27 海馬硬化性認知症
28 血管内リンパ腫
29 Gliomatosis cerebri(GC)
30 生活不活発病
31 類似した症状の見分け方

 A うつ病
 B てんかん

32 前交通動脈瘤破裂による前脳基底部健忘
33 肺癌などの多発性脳転移による認知症状態
34 内頸動脈の高度狭窄に起因し、多少なりとも可逆的な認知症状態
35 びまん性軸索損傷による認知機能障害 いわゆる高次脳機能障害の一型
36 脳出血後遺症としての認知症アラカルト
37 有名だがみることの少ないstrategic infarctionによる認知症
38 一過性全健忘は2~3日後にDWI
最新 女性心身医学

個数:
最新 女性心身医学

[ 監修 ] 本庄 英雄
[ 編集 ] 日本女性心身医学会
[ 発行年 ] 2015年8月1日
[ 分類 ] 心身医学 産婦人科
[ 仕様 ] B5判・356頁
[ 定価 ] 本体5,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-24-6
[ 主な内容 ]
●時代の変遷の中で新たにクローズアップされてきた諸問題や最新の研究成果を取り入れた、初学者にも理解しやすい実践的な指南書。
●産婦人科領域のみならず、心身医学・精神医学・心理学・教育学など、女性とかかわる研究者や臨床家にとって真に役立つ座右の書である。


序文

 わが国で産婦人科心身症研究会が発足して40年あまり、日本女性心身医学会として新たなスタートを切ってから間もなく20年、という大きな節目の時期に、本学会の発展を象徴するかのような、この最新テキストブックの発刊が実現したことは、われわれにとって望外の喜びである。21世紀は心の時代といわれ、また、性差医学の重要性が取り沙汰されて久しいが、それらをはるかに遡る半世紀以上前から、女性の心と身体の相関をめぐる諸問題を解明しようとする試みは、熱心な研究者・臨床家先輩諸氏によって地道に脈々と受け継がれ、現在に至っている。しかし、それが1つの体系的かつ重要な領域として注目されるようになり、多彩な分野の専門家同士が積極的な交流をもつようになったのは、近年になってからであり、本学会の歩みは、まさにその足跡とともにあるといえる。
 本学会は、かつて、国際女性心身医学会の主催を控えた2006年に、『TEXT BOOK女性心身医学』を出版した実績があり、それまでにない視点から女性特有の心身医学的諸問題を網羅的に解説した成書として、現在もさまざまな分野で活用されているものと思う。今回の『最新 女性心身医学』は、その後の目まぐるしい時代の変遷の中で新たにクローズアップされてきた諸問題や最新の研究成果も取り入れ、より体系的な、それでいて初学者や身体診療科の医療者にも理解しやすい、手元で実践的に使用できるコンパクトな指南書を、というコンセプトのもとに、まったく新たに編纂されたものである。これはまさに、近年、本学会が700余名の会員を擁し、産婦人科周辺領域のみならず心身医学・精神医学・心理学・看護学・助産学・教育学等々の多岐にわたる分野の専門家が一堂に会する組織へと成長したことによって、達成できた成果といえる。本書の執筆者は、学会の主要メンバーを中心に、今まさに日本の女性心身医学領域を、各方面から牽引している実力者ばかりであり、非常に密度の濃い内容となっているうえ、この領域が少しでも広く認知され活用されていくことを願う各執筆者の熱い思いが、ひしひしと伝わってくる書籍となった。
 第Ⅰ章の総論では、女性心身医学の歴史を概説するとともに、心身医学的あるいは精神医学的な診断・検査・治療法の基礎を、専門外の初学者にもわかりやすい非常に具体的な記述で解説している。第Ⅱ章の各論では、思春期・性成熟期・更年期・老年期という女性の複雑なライフステージと、内分泌学的変化・月経・妊娠出産・閉経・加齢・身体疾患・社会とのかかわりといった具体的諸事象とが交錯して生じる女性特有の心理社会的問題を、さまざまな角度から詳説している。この領域が包含する課題は、非常に複雑かつ多岐にわたるため、いまだ研究途上の部分も多い。よって、各項目間でやや内容の重複している部分も見受けられるが、むしろそれは、現時点での各研究者の独自の視点からの多様な見解として記述されているものであり、読者諸氏が、今後の研究・実践の中でさらに発展・統合していってくださることを切に望むものである。
 われわれは、本書が、女性とかかわるさまざまな研究者・臨床家にとって真に役立つ座右の書となり、1人でも多くの女性の生涯にわたる心身の健康に資することを心から願ってやまない。
 そして最後に、刊行にあたり、多忙を極めながら惜しまぬご尽力をくださった執筆者各位の熱意と、発案・企画から1年半という出版計画を見事に達成してくださったぱーそん書房の山本美惠子氏の昼夜兼行の実行力に、改めて深い感謝の念を捧げたいと思う。
 2015年初夏
日本女性心身医学会『最新 女性心身医学』
編集ワーキンググループ代表 中澤 直子


目次


Ⅰ.総 論


1 女性心身医学の歴史と方向性

  Ⅰ.国際女性心身医学会
  Ⅱ.日本女性心身医学会
  Ⅲ.現況と将来

2 心身医学的診断法

  Ⅰ.医療面接とは
  Ⅱ.面接時の基本的姿勢
  Ⅲ.面接の場面設定
  Ⅳ.面接の導入
  Ⅴ.現病歴の聴取
  Ⅵ.生育歴の聴取
  Ⅶ.病態仮説の作成
  Ⅷ.精神疾患の除外
  コラム1 境界性パーソナリティ障害と発達障害

3 心理検査の活用

  Ⅰ.心理検査の目的
  Ⅱ.心理検査の種類
  Ⅲ.心理検査実施における留意点
  Ⅳ.心身医学の現場で役立つ心理検査

4 精神療法―一般心理療法と心身医学の三大治療法
         (交流分析、自律訓練法、行動療法)

  Ⅰ.精神療法
  Ⅱ.交流分析
  Ⅲ.自律訓練法
  Ⅳ.行動療法

5 その他の治療法

 1.認知療法、森田療法
  Ⅰ.認知療法
  Ⅱ.森田療法
  Ⅲ.認知行動療法と森田療法の違いについて
 2.漢方治療、代替医療
  Ⅰ.漢方治療
  Ⅱ.代替医療


Ⅱ.各 論


1 女性のライフサイクルとメンタルヘルス

  Ⅰ.日本の女性のライフコースの構成要素
  Ⅱ.日本の女性のライフコース上のストレス

2 摂食障害

  Ⅰ.疫学
  Ⅱ.発症要因
  Ⅲ.臨床像
  Ⅳ.診断
  Ⅴ.治療
  Ⅵ.症例とその対応
  Ⅶ.予後
  コラム2 無月経への対応
  コラム3 女性アスリートのメンタル課題

3 思春期の性行動と避妊

  Ⅰ.性行動の実態
  Ⅱ.人工妊娠中絶と避妊
  Ⅲ.10代の妊娠・出産
  Ⅳ.10代の性感染症
  Ⅴ.性被害

4 性と気分障害、不安障害、睡眠障害

 1.気分障害、不安障害
  Ⅰ.気分障害
  Ⅱ.不安障害
 2.睡眠障害
  Ⅰ.不眠症(不眠障害)
  Ⅱ.睡眠時無呼吸症候群
  Ⅲ.周期性四肢運動障害とレストレスレッグス症候群
  Ⅳ.ナルコレプシー

5 女性と身体症状症および関連症群

  Ⅰ.身体症状症および関連症群の概要
  Ⅱ.身体症状症および関連症群の治療
  Ⅲ.薬物療法
  コラム4 月経関連片頭痛

6 月経困難症

  Ⅰ.定義と頻度
  Ⅱ.リスク因子と心理社会的要因の関与
  Ⅲ.治療における心身医学的アプローチの可能性
  Ⅳ.子宮内膜症に伴う心身医学的問題
  Ⅴ.子宮筋腫に伴う心身医学的問題

7 月経前症候群(PMS)

  Ⅰ.定義と診断基準
  Ⅱ.症状の種類と出現様式
  Ⅲ.疫学的知見
  Ⅳ.病因
  Ⅴ.診断
  Ⅵ.治療




8 月経前不快気分障害(PMDD)

  Ⅰ.PMSの診断と歴史
  Ⅱ.PMDDの歴史
  Ⅲ.PMDDの症状と診断
  Ⅳ.PMDDの疫学
  Ⅴ.PMDDの発症機序
  Ⅵ.PMDDとうつ病の異同
  Ⅶ.PMDDの危険要因・関連要因
  Ⅷ.PMDDの治療

9 慢性骨盤痛と外陰痛

  Ⅰ.慢性痛とは
  Ⅱ.骨盤痛患者における心身症
  Ⅲ.慢性痛の発現機序
  Ⅳ.診断
  Ⅴ.治療
  Ⅵ.慢性骨盤痛と外陰痛の治療例
  Ⅶ.疼痛の性差
  Ⅷ.心身症としての慢性痛の診療における留意点

10 セクシュアリティと性機能障害

  Ⅰ.セクシュアリティと女性心身医学
  Ⅱ.性反応と性機能障害
  Ⅲ.性機能障害の診断と治療

11 不妊症とメンタルケア

  Ⅰ.不妊治療患者の特徴
  Ⅱ.不妊治療患者の求めているもの
  Ⅲ.今後の生殖医療とメンタルケア

12 妊娠と遺伝カウンセリング

  Ⅰ.妊娠中の遺伝カウンセリングとは
  Ⅱ.これからの遺伝子検査が出生前診断にもたらす課題
  Ⅲ.子どもとして受け入れること=自分を受け入れること

13 妊娠中のメンタルケア―精神疾患合併の妊娠管理
             および流産・死産と心理反応

  Ⅰ.妊娠前の留意事項
  Ⅱ.うつ病
  Ⅲ.統合失調症
  Ⅳ.パニック障害
  Ⅴ.双極性障害
  Ⅵ.産科異常(流産、死産)に対する心理反応
  コラム5 妊娠中の向精神薬の使い方

14 周産期のメンタルヘルス

 1.産後のメンタルケア、育児ストレス
  Ⅰ.産後の母親の心理状態
  Ⅱ.産後の母親のストレス状態の評価
  Ⅲ.産後の母親の精神心理的生活の評価
  Ⅳ.産後のストレスを軽減する支援
  Ⅴ.産後の母親へのメンタルケアの基本
  Ⅵ.行政で行われている具体的な育児への支援
  Ⅶ.母子に対する支援者の方向
 2.周産期のうつ病、その他の精神疾患
  Ⅰ.周産期の精神疾患
  Ⅱ.新生児喪失に関連した精神病理
  Ⅲ.産褥期の精神疾患
  コラム6 乳幼児虐待と世代間連鎖

15 更年期のメンタルヘルス

  Ⅰ.更年期障害の病態
  Ⅱ.更年期の精神症状

16 高齢女性をめぐる諸問題

  Ⅰ.老年期・寿命・身体疾患
  Ⅱ.老年期・精神疾患・女性
  コラム7 百寿女性の心身の健康

17 婦人科腫瘍とメンタルケア

  Ⅰ.婦人科腫瘍のメンタルケア
  Ⅱ.婦人科悪性腫瘍の緩和ケア

18 有職女性の心理社会的問題

  Ⅰ.女性の労働状況
  Ⅱ.有職女性の心理社会的問題
  Ⅲ.有職女性の健康支援の在り方

19 女性と暴力被害

 1.DV被害の実態と精神科的治療
  Ⅰ.DVの形態
  Ⅱ.DVの実態
  Ⅲ.精神健康被害
  Ⅳ.DV被害者への対応
 2.性暴力被害
  Ⅰ.性暴力の形態
  Ⅱ.性暴力被害の実態
  Ⅲ.精神健康被害
  Ⅳ.性暴力被害者への対応

20 女性のトラウマとPTSD、複雑性悲嘆

  Ⅰ.女性における心的外傷的出来事の体験とPTSD
  Ⅱ.女性における死別体験と複雑性悲嘆

21 女性と依存症

  Ⅰ.依存症の概要
  Ⅱ.依存症と発達障害・気分障害
  Ⅲ.買い物依存
  Ⅳ.タバコおよびアルコール依存

認知症ケア最前線

個数:
知っておきたい
認知症ケア最前線
―理解と実践―

[ 監修 ] 長谷川和夫
[ 編集 ] 本間 昭 永田久美子
[ 発行年] 2014年6月1日
[ 分類 ] 介護・福祉 精神科
[ 仕様 ] B5判 本文304頁
[ 定価 ] 本体2,700円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-13-0
[ 主な内容 ]
●日々、認知症の人と向き合っているケア専門職必携の実践テキスト。
●認知症ケアに携わる関係者が共通の理解をもつために必要な、ケアの理念、知識、スキルをすべて網羅。


監修のことば

 超高齢時代にある日本に生きる私たち誰もが認知症と無関係でいることはできない。このような状況にあって本書、“認知症ケア最前線―理解と実践”が刊行されることは誠に意義の深いものと考えられる。
 21名の執筆者はいずれも認知症ケアに日夜献身的な努力を継続しておられる方である。また本書の編集に携わった本間昭氏と永田久美子氏は同じ職場にあって研鑽を積み合った仲間であり、本書刊行のキーパーソンであった。
 目次のテーマをみると、まずパーソンセンタード ケアという認知症ケアの基本理念が詳述され、次いで認知症の人の地域ケア、認知機能障害をもつ人への介護の基本、自立支援とリスクマネジメント、若年性認知症のケア、災害時のケアと課題、虐待とその防止、認知症の終末期ケアなどが解き明かされている。
 ところで2013年12月11日、G8(主要8ヵ国)の閣僚級が話し合う世界で初めての「認知症サミット」が英国のロンドンで開催された。主催国のDavid Cameron首相は認知症への対策を国の重要課題として位置づけ、各国に連携協力を呼びかけた。サミットではG8の保健担当閣僚のほかに研究者、製薬企業の代表者らが参加、2025年までに治療法を確立することを目指し、研究費の大幅増や研究データの共有などが承認され大きな成果をあげた。国際アルツハイマー協会の推計によると、2010年の時点で世界のアルツハイマー型認知症は3,560万人でその費用は医療介護費や家族などによる無償のケアを含めると約6,040億ドル(約63兆円)とされている。殊に将来アジア地域では高齢化が急速に進み認知症の激増が予測される。多くの認知症対策の先行国として、日本に対する期待は大きいとされている。このような現況から考えても本書の刊行は誠に時宜を得たものであろう。
 認知症ケアは身近な課題として今後ますます重要視されてくるだけに、認知症の人のケアに携わるケア職をはじめ、多くの関連職種の方々に、本書を通して認知症について理解を深め、より深く学んで頂きたいと願っている。
 平成26年5月吉日
              長谷川 和夫


はじめに

 認知症ケア(ここでは介護のみではなく医療も含めた意味でケアを用いる)の目標がそれまでの生活を可能な限り維持できるように支援することであることに異論はないであろう。認知症の代表的な原因疾患であるアルツハイマー病(AD)を例にとれば、短期的には一時的にいくつかの機能が改善されることはあっても、数年という中長期的な経過をみればすべての機能が悪化方向に変化することは間違いがない。このような特徴をもつ疾患であるからこそ、認知機能障害によってもたらされる生活の不自由さをいかに支えるかということが目標となる。独居のADの例を考えればわかりやすい。高血圧症などの生活習慣病を合併していることが多いが、彼/彼女のそれまでの生活をできるだけ長く維持するためにはADとともに生活習慣病の治療が必要になる。認知症の重症度が軽度であったとしても、彼/彼女が1人で生活を続けるためには、服薬をきちんとできるかどうかが大きな課題になる。服薬がきちんとできているかどうかの確認は医療機関の診察室の中では難しい。服薬カレンダーなどの利用で済むこともあるが、その都度手渡しして服薬を確認することが必要になることもあり、他職種の手助けがなければ生活を支えられない。食事の確認や金銭の管理についても同様である。認知症の人の生活は多職種の足並みが揃わなければ支えることができない。
 このように認知症の人の生活を支援するためには認知症ケアの目標が関係者間で共有されることが前提になるが、そのためには認知症ケアに関連するさまざまな考え方や用語について共通の理解がなければできない。例えば、認知症の人にみられる行動・心理症状はBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれることが多いが、この用語は1996年と1999年に国際老年精神医学会が主催して行った会議で、従来さまざまな呼称が用いられていた症状や行動が“原因を問わず認知症の人に起きるさまざまな心理的な反応や精神症状、行動を示すために用いられる用語”と定義され、提唱されることから始まっている。しかし、従来のいわゆる問題行動と同義に用いられていることも少なくない。
 本書は、認知症ケアに携わる関係者が共通の理解をもつために認知症ケアの理念、知識、ケアスキルにとどまらず、認知症の人を支えるために必要な事柄が網羅されている。関係者それぞれの職場などで活用して頂ければ幸いである。
 平成26年5月吉日
              本間 昭


目次


1 パーソンセンタード ケアとは


1.認知症ケアの基本
2.パーソンセンタード ケア
3.認知症ケアの環境
4.認知症ケアの技法
5.スピリチュアル ケアについて

2 長寿社会と認知症―社会的な取り組み


1.長寿社会における認知症の現状
2.認知症施策の流れ
3.「今後の認知症施策の方向性について」
4.「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」
5.オレンジプランの現状について

3 認知症の人の地域ケア
    ―本人のよりよい暮らしを地域で支えていくために


1.すべてのケア関係者が、地域ケアに取り組もう
2.地域ケアに取り組むために
    ―基本の考え方と方針を共有しよう
3.地域ケアの実践

4 生活障害の理解と支援


1.生活障害としての症状

  1.アルツハイマー型認知症
  2.前頭側頭型認知症
  3.レビー小体型認知症
  4.血管性認知症

2.認知機能障害をもつ人への介護の基本

  1.易疲労性(疲れやすさ)
  2.失見当識
  3.記憶障害
  4.失語
  5.失行
  6.失認
  7.注意障害
  8.実行機能障害
  9.生活の質

3.行動・心理症状をもつ人への介護の基本

  1.妄想(物盗られ妄想、見捨てられ妄想など)をもつ人
  2.不安をもつ人
  3.抑うつ気分をもつ人
  4.混乱や戸惑いが目立つ人
  5.衝動性が目立つ人
  6.睡眠・覚醒リズム障害がある人
  7.幻覚(幻視・幻聴)をもつ人


5 自立支援とリスクマネジメント


1.転 倒

  1.認知症の人の転倒の特徴
  2.認知症の人の転倒の原因とアセスメント
  3.認知症の人の転倒に関するリスクマネジメント

2.食 事

  1.食事の自立支援
      ―認知症の人の食べる力を引き出す環境づくり
  2.食事に伴うリスクマネジメント

3.排 泄

  1.排泄のメカニズム
  2.排泄ケアの実際

4.入 浴

  1.認知症の人にとっての入浴とは
  2.認知症の人が、快適に、
      安心して入浴できるための環境づくり
  3.できるはずのことを奪わないための自立支援
      ―入浴動作のアセスメント
  4.組織としてのリスクマネジメント
  5.その他

5.入居者のトラブルについて

  1.認知症の人とそうでない人のトラブル
  2.認知症の人同士のトラブル





6 認知症の人のためのケアマネジメント


1.ケアマネジメントの基本
2.認知症の人のケアマネジメントの実際
3.センター方式の課題
4.チームアプローチとチームケア
5.ケアマネジメントに必要な技術

7 虐待について


1.養介護施設従事者等による高齢者虐待とその防止
2.養護者による高齢者虐待の現状と防止

8 成年後見制度について


1.権利擁護の必要性と成年後見制度
2.成年後見制度とは
3.成年後見制度の活用
4.成年後見制度の課題と展望―本人の最善の利益のために

9 若年性認知症とケアの課題


1.若年性認知症の実態
2.原因となる疾患
3.老年期認知症との違い
4.若年性認知症に対する支援
5.介護保険の利用状況
6.若年性認知症のデイケア

10 災害時のケアと課題


1.東日本大震災で起こったこと
2.災害の想定
3.災害時の施設におけるケア
4.避難所におけるケア
5.防災と減災に向けた備え

11 認知症の終末期ケア


1.認知症の人の終末期とは
2.認知症緩和ケア
3.死に向かうプロセス
4.終末期の生活支援
5.医療連携
6.終末期認知症ケアの実際

12 家族のケア


1.在宅介護者の心理的理解と支援方法
2.在宅介護継続に向けた観察と声かけ
3.介護離職と介護を苦にした自殺の防止
4.家族を支援する介護者交流会の企画と開催

13 認知症医療とケアの今後の課題


1.認知症の医療
2.認知症ケアの現状
3.認知症医療とケアの今後の課題

Q&A


1.薬物療法の対象となるBPSDとはどういう症状でしょうか。
2.散歩やデイサービスに誘っても、いろいろと理由をつけて
  動こうとしません。
3.夜中に大声を出すので家族は眠れません。大きなストレスに
  なっています。
4.認知症が疑われる介護保険の利用者ですが、家族は医療機関
  を受診しようとしません。
5.なんでも物を集めてくるので部屋が溢れて困っています。
6.「どこも悪くない」と言って診療や治療を嫌がります。
7.食事が配膳されると、ご飯やおかずをごちゃまぜにして食べ
  ようとしません。
8.同じことを何回も聞かれたりするとついきつい口調になって
  しまいます。どうすれば穏やかに対応できるでしょうか。
認知症ケアの作法 よりよいケアを目指して

個数:
認知症ケアの作法
よりよいケアを目指して

[ 著 ] 長谷川和夫
[ 発行年 ] 2013年6月1日
[ 分類 ] 介護・福祉
[ 仕様 ] A5判 本文96頁
[ 定価 ] 本体 1,200円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-08-6
[ 主な内容 ]
●認知症の介護を専門職とした方のための書籍です。
●認知症の人はどういう気持ちでいるのか、どんなケアを求めているのか、わかりやすく解説されています。
●パーソンセンタード ケアを理念とした認知症の人とのかかわり方について説いています。


序にかえて

 本書は、認知症の人を介護専門職として支えている方々を対象にしたものです。超高齢社会の現在、今や認知症は決して他人事ではありません。私たち一人ひとりの課題です。
 介護保険が施行されて以来、認知症ケアは施策のうえでも研究・研修の面でも、そして市民の認識のうえでも著しく進化してきたと思います。殊に地域包括ケアの考え方が成熟しつつある現在、ケア専門職への期待は大きいと考えられます。
 私たちは、認知症の人が発症されてからその看取りの時期までの長い体験の旅を関係者と連携を保ちながら支えてゆくことになります。そのときの認知症ケアの作法をお互いに学んでいきたいとの思いで本書を上梓しました。
 “ケアする人の思いと行動によって、ケアされる人の人生は変わる”という言葉をどこかで読みました。重い意味があります。
 私は精神科医として過去約50年にわたり診療の現場にいます。最近、かかりつけ医の先生方にもその人らしさを大切にする考え方、パーソンセンタード ケア(Tom Kitwood, 1997)の理念を診療の面にも活かして頂くことを念願して、ささやかな活動をしています。
 高齢化が進む世界の人々は、日本がこの面でトップランナーとして走っていることに注目しています。殊にアジアの国々は速いスピードで人口の高齢化が進んでいます。このような状況で認知症の人と家族を専門職として支える私たちの責務は大きいと思います。
 神様からの希望をもって、お互いの絆を大切にする日々を過ごしていきましょう。本書がその役目を果たしてくれることを確信しています。
 平成25年5月吉日
 長谷川 和夫
             

目次


【1】 物語の始まり


  1.アルツハイマー病の始まり
  2.認知症の物語『恍惚の人』
  3.認知症を取り巻く近年の現状

【2】 認知症の医学的知識


  1.認知症の判断はどのように行われるのか
  2.長谷川式認知症スケールの使い方について

【3】 認知症の原因疾患


  1.アルツハイマー型認知症
  2.血管性認知症
  3.レビー小体型認知症
  4.前頭側頭型認知症
  5.その他
  6.軽度認知障害
  7.認知症と似ているが認知症でない病気

【4】 認知症の心理学的特徴


  1.認知症の人がもつ心理学的問題
    コラム 「Doing」でも「Going」でもない「Being」がある
  2.認知症の人にみられる行動 BPSD

【5】 認知症ケアの理念


  1.パーソンセンタード ケアとは
  2.認知症の人の内的体験とは






【6】 認知症ケアの実際 パーソンセンタード ケア


  1.認知症の人へのかかわりの基本
  2.質の高いケアとは
  3.認知症の人が求めるケアとは
  4.やってはいけないこと
    コラム 零の音
  5.老いることとは
    コラム 絶対者 神との出遭い
  6.介護のストレスを避けるためには

【7】 認知症ケアの作法


  1.服装、態度あるいは言葉遣いに配慮すること
  2.その人に寄り添ったケアを
  3.連携について
  4.家族への対応を工夫する
  5.感性をもつこと それを保持する努力
  6.認知症の人の暮らしを第一に考えていくこと
  7.明るい対応 笑いをもっていくこと

【8】 グリーフ ケア



【9】 地域におけるサポート体制と連携


  1.町づくりについて
  2.これからの認知症ケア

【10】 災害時における認知症ケア


  避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド


エビデンスに基づく認知症補完療法へのアプローチ

個数:
認知症の介護
共に暮らす家族のために

[ 著 ]  長谷川和夫
[ 発行年 ] 2013年5月10日
[ 分類 ]  介護・福祉
[ 仕様 ]  B6判変形・138頁
[ 定価 ] 本体 1,200円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-04-8
[ 主な内容 ]
●「認知症とは何か」についてまず医学的な基本知識をわかりやすく解説しています。
●認知症の人はどんな気持ちでいるのかを知って、本人の視点に立った支え方、パーソンセンタード ケアについて紹介しています。
●介護者の思いが述べられて、介護によるストレスを招かないための工夫が記述されています。
●介護サービスの利用の仕方や自分が認知症にならないための予防などが続きます。


まえがき

 認知症の御本人に最も真剣に、そして真心をもって向き合っているのは、その人と一緒に暮らしている家族の方です。“これまではすべてのことを相談して頼りにしてきたのに、日常生活の中でこの私に頼っている状態になってしまった”、“これではまさに立場の逆転で到底私には受け入れられない”“もの忘れがひどくなって、何回も同じことを聞いてくるし、こちらの言うことも理解していない様子で会話が成り立たないことが多くなってしまった。どうしてこんな状態になってしまったのだろうか”“脳はいったいどうなっているのだろう。どうして治らないのだろうか”“日を重ねるにつれて、次第にひどくなっていくようだ”“たまにやってくる身内の人は、これくらいなら歳をとったら誰にでもあるよ、とか、少し大げさに考え過ぎているんではないのかと、むしろ非難がましく私に注意して帰ってしまう。私1人で苦しまなくてはならない。どうしたらいいのだろうか”というようなことを日夜考えあぐみ困惑しています。
 本書は、このような体験をされている家族の方に読んで頂くことを念願して編集されています。
 ところで日本は長寿の国です。高齢になればどんな人でも認知症になる可能性があります。決して他人事ではありません。まず認知症についてよく知ることです。知識は力です。
 本書は認知症とは何か、についてまず医学的な基本知識をわかりやすく解説しています。続いて認知症の人はどんな気持ちでいるのかを知って、本人の視点に立った支え方、パーソンセンタード ケアについて紹介しています。次に介護者の思いが述べられて、介護によるストレスを招かないための工夫が記述されています。そして介護サービスの利用の仕方や自分が認知症にならないための予防などが続きます。
 私は1953年以来、東京慈恵会医科大学に勤務、精神科医として臨床の現場に立ちました。若いときには4年間アメリカに留学しました。認知症の医療にかかわったのは1968年でした。そのとき、老年精神医学の権威でいらした新福尚武先生との出会いがあり、多くのことを教えて頂きました。1973年(当時44歳)、新設された聖マリアンナ医科大学の教授に就任、翌年の1974年に長谷川式認知症スケールを開発しました。1989年から多くの専門医の御協力のもとにエーザイ研究所の開発したドネペジル(商品名 アリセプト)の臨床治験統括医となり、1999年、本邦最初の認知症薬を用いることに成功しました。また「認知症の人と家族の会」の顧問として高見国生代表らに協力して、家族の皆様から学んでいます。2000年に社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センターにセンター長として赴任してからは、主に認知症介護指導者の育成にかかわり、多くの専門職との交流をしています。本書は、このように多くの人との絆の中で授けられた経験をもとにして得られた情報です。是非、多くの方に読んで頂きたいと願っています。
 平成25年5月吉日
              長谷川 和夫
             

目次

  まえがき

1 認知症とはどんな病気か

  ・認知症は身近な病気です
  ・家族が認知症かと疑い始めるのはどんな時か
  ・家族に押し寄せる不安
  ・認知症とはどんな病気か
  ・健康な人のもの忘れとの違いは
  ・家族が認知症かどうかを見極める3つのポイント

2 診断はどのようにされるのか

  ・本人には嘘をつかないで病院へ連れて行きましょう
  ・医師による正しい診断
  ・長谷川式認知症スケールとは
  ・認知症の重症度評価とは
  ・告知について

3 認知症の原因疾患

  ・アルツハイマー型認知症
  ・血管性認知症
  ・レビー小体型認知症
  ・前頭側頭型認知症
  ・軽度認知障害
  ・その他
  ・若年性認知症について
  ・認知症と間違いやすい状態

4 認知症の人と暮らすということ

  ・認知症の人に起こるさまざまな症状とその対応

5 認知症の人はどういう気持ちでいるのか

  ・認知症の人の思い
  ・「パーソンセンタード ケア」を目指しましょう
  ●コラム「ケアする心」
  ・自分の視点で介護をしないこと
  ・認知症の人との接し方
  ・健康管理に目を配りましょう






6 介護者の思い

  ・介護する側とされる側との関係性による負担の違い
  ・虐待について
  ・介護ストレスを招かないための工夫
  ●コラム「笑ってください」

7 介護サービスを利用しましょう

  ・介護サービスを利用する方法
  ・居宅サービスと施設サービス
  ・施設に入居することになったなら
  ・終末期を迎えたら

8 自分が認知症にならないための予防

  ・認知症の予防について
  ・認知症の予防対策
  ・認知症予防のまとめ ― 認知的予備力を貯える

9 認知症になっても安心して暮らせる町づくりを

  ・「認知症の人と家族の会」について
  ・「認知症でもだいじょうぶ」町づくりキャンペーン
  ・成年後見制度について

10 あとがき

  ・老いについて思うこと

認知症ケアの新しい風

個数:
認知症ケアの新しい風
支え合う温もりの絆を創る

[ 著 ] 長谷川和夫
[ 発行年 ] 2014年8月8日
[ 分類 ] 介護・福祉
[ 仕様 ] A5判 本文152頁
[ 定価 ] 本体2,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-16-1
[ 主な内容 ]
●「長谷川式認知症スケール」で世界的に知られる筆者が“なぜ、認知症ケアは難しいといわれるか”の問いに答える。
●認知症ケアの今、そしてこれからを思うすべての方に「認知症ケアへの新しい風」を送る。


はじめに

 顧みると2001年、21世紀初頭においてエーザイ株式会社は、認知症ケアなどに関わる多岐にわたる専門職を対象に、小冊子「痴呆ケアサポート」(現、「Dementia Support」)を刊行しました。その最初のページに筆者が「認知症ケアへの新しい風」を執筆しました。これを33編まで連載したものをテーマごとに5つの章にまとめ、上梓したのが本書です。
 私が認知症の医療に関わるようになったのは、1966年に故新福尚武先生が鳥取大学から私の所属していた東京慈恵会医科大学精神神経科教室へ主任教授として赴任されたときからでした。運命的な出遭いだと思っています。すでに、新福先生は日本の老年精神医学者としてご高名な方でした。たまたま1968年に、東京都内の老人ホームなどの利用者について精神保健調査をすることになりました。そのとき新福先生が、痴呆(当時の呼称)診断の際に起こるブレを防ぐために診断尺度をつくることを提案されました。これが「長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS)の開発につながったのです。精神科医が痴呆の診察をするときに用いる設問から11項目を選んで、「老人の痴呆審査スケールの一検討」と題して1973年に専門誌に発表しました。同年、私は聖マリアンナ医科大学に教授として赴任し、その前年(1972年)に有吉佐和子の有名な小説『恍惚の人』が出版されました。
 HDSは質問項目の難易度に対応して、各項目の配点に重み付けをしたのが特長でした。本スケールの得点の標準化をギルフォード法に準じて行った結果、満点は32.5点で、10点以下を痴呆と評価しました。痴呆の診断にあたって数量化した試みは、一般臨床医にも扉を開いたことになり、広く用いられる結果になりました。
 1991年、施設利用者を対象としたHDSを一般利用者にも使用可能にするために改訂したものが、「改訂 長谷川式簡易知能評価スケール」(HDS-R)です(通称「長谷川式認知症スケール」)。遅延再生や言葉の流暢性を評価する設問を新しく加え、全設問数をHDSの11問から9問に減らしました。本スケールの信頼性と妥当性が検証され、カットオフポイントを20/21に設定した場合(HDS-R得点で20点以下を認知症、21点以上を非認知症とした場合)に弁別力が最も高く、感受性が0.90、特異性は0.82でした。総得点は30点で、20点以下が認知症の疑いと判定されます。ただし、本スケールは簡易スクリーニング検査であって、これのみによって認知症の診断を下すことはできません。
 聖マリアンナ医科大学在籍当初は、認知症はまだ未解の脳疾患でした。現在は使用されている臨床症状の進行を抑止するドネペジル(アリセプト)も医療現場にはまだなく、また介護保険制度もありませんでした。臨床医は認知症の診断はできても何の治療薬もなく、患者さんに対して申し訳ないという苦しみと無力感を体験しました。
 不思議なめぐり合わせだと思いますが、私はしばしば組織の創設に立ち合うチャンスに遭遇しています。まず、1972年に東京都老人総合研究所が設置されたとき、短期間ではありましたが参事研究員、心理精神医学部長として関わり、多くの俊秀の研究者と出遭い、創業のエネルギーを吸収しました。次いで1973年4月に聖マリアンナ医科大学神経精神科講座が創設され、付属病院の診療科と研究室新設の際には設計から始めました。その後21年間にわたり教授を務め、学長、副理事長、理事長と計32年間、大学生活を送りました。
 そして2000年4月、介護保険制度施行と期を同じくして、社会福祉法人浴風会 高齢者痴呆介護研究・研修東京センター(現 認知症介護研究・研修東京センター)にセンター長として赴任しました。それからは、姉妹センターである仙台センターおよび大府センターとともに日本の認知症ケアの索引役として実地に役立つ認知症ケアの研究・研修、ならびに啓発活動に努めることになり、現在に至っています。
 ところで2013年12月11日、「G8認知症サミット」が英国のロンドンで開催され、世界の主要8ヵ国の保健施策担当者、研究者、製薬企業の代表者たちが集まりました。主催国のデーヴィット・キャメロン(David Cameron)首相は、認知症を国の重要課題として位置付け、各国に連携協力を呼び掛けました。2025年までに治療法を確立することを目標にして、研究費の大幅増や研究データの共有などが承認されました。
 国際アルツハイマー協会の推計によると、2010年の時点で世界にアルツハイマー型認知症は3,560万人に達し、その医療および介護費は家族等による無償のケアを含めると約6,040億ドル(約63兆円)とされています。ことに将来、アジア地域では高齢化が急速に進み、認知症の激増が予測されます。認知症対策の先行国として、日本に対する期待は大きいのです。
 原因疾患の70%とされるアルツハイマー型認知症を例に挙げても、30年前までは未知の脳疾患であり、病態や経過などは明らかではなく、診断、治療、ケアの方法などは確立していませんでした。しかし、この30年で大きな進歩を遂げました。医療と福祉の連携、地域ケア、そして認知症になっても大丈夫な町づくりへと進んでいます。
 これからの時代、広く認知症に関わる多様な職種の方々が、認知症本人を支える技術とパーソンセンタードケアの心をもち、お互いに励まし合って活躍されることを祈ります。
 なお、本書の上梓にあたり、メディア・ケアプラスの松嶋薫氏に感謝いたします。

    2014年7月 初夏の空が広がる認知症介護研究・研修東京センターにて
              長谷川 和夫


目次


はじめに

第1章 ケアについての私の考え方


1.介護のストレスを避けるには
2.妄想への対応
3.出遭いと感性
4.認知症の人が求めるケア
5.老いることの意味
6.認知症ケアの基本にある想い
7.“ケアする心”
8.ある一日の出遭い
9.認知症ケアの専門性
10.新しい絆を創りましょう
11.認知症ケアの作法(1)
12.認知症ケアの作法(2)

第2章 私とパーソンセンタードケア


1.新しい認知症ケアの流れ ─ 何が新しいのか
2.物語を大切にしたケア
3.帰って来てくれ、僕の心よ
─ 認知症の人の喪失体験を理解する
4.認知症ケアの基本課題
5.高齢期をかけがえのない尊い存在に
6.認知症ケアと出遭い体験
7.新しい絆を尊重するケアへ
8.認知症の基本課題 ─ 今とこれから

第3章 認知症の人が医師に求めること
― 認知症と医療


1.認知症ケアのポイント
2.長谷川式スケールをめぐって
3.認知症の方との出遭いをめぐって
4.認知症をめぐる想い
5.認知症診療をめぐる想い
6.認知症治療薬の開発




第4章 認知症施策と私の考え


1.2005年、春 「痴呆」から「認知症」に改称
─ どこが新しいのか
2.認知症の人とともに暮らす町づくり
3.「『認知症でもだいじょうぶ』町づくりキャンペーン」の発展
4.認知症対応の地域診断とマップ作り
5.認知症ケアで大切なこと ─ 今再び考えよう
6.オレンジプランが示すこれからの認知症ケア
7.認知症の地域ケア ─ 今とこれから

第5章 私が認知症に出会うまで


1.精神科医を目指す
2.アメリカ留学により国際性を身につける
3.新福先生との出逢い
4.長谷川式簡易知能検査スケールの誕生
5.認知症ケアの拠点として
 認知症介護研究・研修センター創設
6.新しい風を吹き込むために

chronicle ─あとがきに代えて


平成21年度日本認知症ケア学会・読売認知症ケア賞を受賞
年譜 認知症医療・ケアと私の歩み
エビデンスに基づく認知症補完療法へのアプローチ

個数:
医療者とセラピストに役立つ 新脳波技術
「NAT」&「DIMENSION」
エビデンスに基づく
認知症 補完療法へのアプローチ

[ 監修 ]  長谷川和夫/武者利光
[ 編集 ]  工藤千秋
[ 発行年 ] 2012年11月1日
[ 分類 ]  精神科・リハビリテーション・東洋医学
[ 仕様 ]  B5判・186頁
[ 定価 ] 本体 2,800円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-03-1
[ 主な内容 ]
●脳電位をコンピューターで処理した新脳波技術「NAT」「DIMENSION」が認知症治療の診断方法として今、注目されている。これは医療者のみならず、認知症の患者や家族が脳の働きを目で見て理解できる画期的な測定方法である。
●本書では認知症治療において、多様な補完療法がいかに効果を表しているのかを「NAT」でエビデンスに基づきながら評価し、紹介している。
●認知症診療にかかわる医療関係者のみならず、セラピストの方々にも大いに役立つ実践書である。


序文

 MRIに代表される画像診断の進歩により、脳の病気の"形状(かたち)"が見える時代となりましあた。脳外科手術などの治療効果も一目瞭然です。そんな陰で、脳の"機能(はたらき)"の情報を与えてくれる脳波(脳電位)検査は、いつの間にか、てんかんやその他の限られた神経疾患の診断に使われるのみになってしまいました。

 しかし、ここ数年の間に脳電位をコンピュータで処理して脳表面に表示する新しい脳波技術が、 東京工業大学 武者利光名誉教授により開発・実用化されました。この新技術はDIMENSION(ディメンション)&NAT(ナット)と呼ばれます。これを用いると、診断・治療におけるその時々の脳の"機能(はたらき)"が、まるで画像を見ているかのように、医療者だけでなく、患者さんご自身、そしてそのご家族にまでも、客観的にはっきりとわかります。2006年5月、初めてこの技術を目の当たりにした私は、「武者先生、これは脳波のルネッサンスです!」と叫んでいました。幾多の先達により確立された脳波が、再び輝きを取り戻した瞬間でした。

 残念なことに認知症患者は増え続けています。正しい診断と薬剤による論理的な治療は当然ですが、私にはそれだけで十分であるとは思えません。本書のコラムで長谷川和夫先生が述べられている"パーソン センタード ケア(Person Centered Care)"がこれからは必要です。現在では補完療法と呼ばれるいくつもの療法があります。それらをしっかりと評価し科学的な根拠を示すことは、補完療法のセラピストの皆さんの自信にもなり、ひいては"患者さん中心のケア"にもつながります。DIMENSION&NATにより補完療法前後の脳機能を評価することは、この領域に科学的なエビデンスをもたらし、医療では埋め切れない部分を補ってくれる、マガイモノではない真の療法であることを示すことになります。

 本書は多くの方々の力が結集されて生まれました。監修のお言葉・コラムへの寄稿を頂きました 臨床脳電位研究会両代表世話人の長谷川和夫先生、武者利光先生、快く執筆をお受けくださいました各先生方、また本書のためにユニークなイラストを精力的に描いてくださった小峰 薫さん、笠井典子さんに心から感謝申し上げます。そして、外来・在宅診療の疲れからか毎晩眠くなってしまい、〆切り日までに原稿を書けなかった私を、温かく見守ってくださり、本書の出版に向けて、産みの苦しみを最後まで心を込めて力強く支えてくださいました「ぱーそん書房」の山本美惠子様、本当にありがとうございました。

 本書により医療者が新脳波技術DIMENSION&NATをやさしく学べ、補完療法のセラピストの方々のモチベーションも向上し、何よりも患者さんとそのご家族に少しでも福音がもたらされることを切に願っています。
 2012年10月吉日

臨床脳電位研究会 事務局長
くどうちあき脳神経外科クリニック 院長
              工藤 千秋
             

目次

Ⅰ.総 論


1 頭から電流が流れ出る! 脳電位とはなんでしょう?
2 「DIMENSION」とはなんでしょう?
3 「NAT」とはなんでしょう?
4 「認知症」ってどんな病気?
5 「DIMENSION」「NAT」で認知症を見てみましょう

  1.アルツハイマー型認知症
  2.アルツハイマー型認知症での「NAT」
  3.血管性認知症

6 うつ病と認知症の関係をNAT で見てみましょう
7 「DIMENSION」「NAT」を用いた各疾患での研究・地域での
利用の現状 コラム  ゆらぎの功罪

Ⅱ.各 論


1 医療での実践
 1.認知症患者の治療効果の評価と解釈
 2.うつ病と認知症の狭間での評価と解釈
 3.治る認知症と脳神経外科手術前後での評価と解釈
 コラム  認知症診療とパーソン センタード ケア
2 NAT と補完療法
3  脳地図の見方:脳の機能局在
~神経神話から目を覚まして脳の働きを理解する~
4 各補完療法とNAT による評価の実際
 1.アロマテラピー

  1.アロマテラピーとはなんでしょう?
  2.アロマテラピーの実際の手技
  3.アロマテラピー(芳香療法)を受けた方のNAT 解析例

 2.音楽療法

  1.音楽療法とはなんでしょう?
  2.音楽療法の実際と手技
  3.音楽療法を受けられた方のNAT 解析例

 3.化粧療法

  1.高齢者に対する化粧療法とはなんでしょう?
  2.高齢者化粧療法ハンドマッサージ施術の行程と留意点
  3.ハンドマッサージを受けた軽度認知症の方の DIMEN-
    SION・NAT 解析例

 4.現代レイキ

  1.現代レイキとはなんでしょう?
  2.レイキヒーリングの実際の手技

 5.心身機能活性運動療法(ゲーゴルセラピー)

  1.心身機能活性運動療法とはなんでしょう?
  2.心身機能活性運動療法の実際の手技
  3.心身機能活性運動療法を受けた方のNAT 解析例






 6.タクティールケア

  1.認知症の方に寄り添うタクティールケアとはなんでしょう?
  2.タクティールケアの実際の手技
  3.タクティールケアを受けた方のNAT 解析例

 7.NOSS(日本踊りスポーツサイエンス)

  1.NOSS とはなんでしょう?
  2.NOSS の実際の手技
  3.NOSS を受けた方のNAT 解析例

 8.鍼治療

  1.鍼治療とはなんでしょう?
  2.鍼治療の実際の手技
  3.鍼治療を受けた方のNAT 解析例

 9.マッサージ

  1.マッサージ療法とはなんでしょう?
  2.マッサージ療法の実際の手技
  3.マッサージ療法を受けた方のNAT 解析例

 10.ヨーガ

  1.ヨーガ療法とはなんでしょう?
  2.ヨーガ療法の実際の手順
  3.ヨーガ療法指導を受けた方のNAT 解析例

 11.リフレクソロジー

  1.リフレクソロジーとはなんでしょう?
  2.認知症患者へのリフレクソロジーの実際の手技
  3.リフレクソロジーを受けた方のNAT 解析例

 12.臨床美術

  1.臨床美術とはなんでしょう?
  2.臨床美術セッション 実際の手技
  3.臨床美術を受けた方のNAT 解析例


Ⅲ.脳波測定と解析


1 脳波ヘルメットの装着方法
2 脳波の測定方法
3 脳波(DIMENSION)の解析方法
4 NAT の解析方法

  1.NAT ネット解析の操作法
  2.まとめかた


Ⅳ.これからの課題


1 認知症治療の現状と目標
2 工学と医学の連携:コア・コンピタンスを求めて
マクウィニー 家庭医療学 上巻

個数:
マクウィニー 家庭医療学 上巻

[ 訳 ]  葛西龍樹 草場鉄周
[ 発行年 ] 2013年5月20日
[ 分類 ]  プライマリケア医学
[ 仕様 ]  A5判・344頁
[ 定価 ] 本体 3,600円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-05-5
[ 主な内容 ]
●原書は『Textbook of Family Medicine(第3版)』、Ian R. McWhinney先生とThomas Freeman教授の共著。
●家庭医療専門医向けのスタンダードなテキストとして世界的にも名著の日本語訳。
●翻訳にあたっては、丁寧に選ばれた言葉を使って膨大な古今の人類の知恵と自らの深い考察を穏やかな語り口で伝えてくれるIanの人柄を大切にするため、本文は敢えて敬体(です・ます調)とした。
●日本では総合診療専門医という名称で呼ばれる分野の専門性の重要な部分が、この家庭医療学に凝集されている。


日本語序文

 「自分の考えはどうしてもギリシャ・ローマ(Greco-Roman)の影響を除けない。リュウキの考えがインド・中国(Indo-China)に影響されているようにね」 ― 時々、Ianはこう言ってほほ笑んだ。
 1968年に英国からカナダへ移って、カナダの大学に最初の家庭医療学講座を開設したIan R. McWhinney先生は、2012年9月28日、ご家族に見守られながら安らかに息を引き取られた。85歳だった。数日後、英国スコットランドのグラスゴーにいた私のもとに彼の訃報が届いた。冷たい雨が降るホテルの部屋で、私は言葉を失った。しばらくして深い悲しみ、懐かしい思い出、そしてあつい感謝の気持ちが訪れ、それらの奔流に私は漂っていた。
 グラスゴーにいたのは、英国家庭医学会(RCGP)の年次学術大会(Annual Primary Care Conference)のplenary speakerとして招待されて、大災害後の福島におけるプライマリ・ケアについて講演するためだった。世界の家庭医療の学会で最も伝統と実績のあるRCGPから学会創設60周年の節目にメインの講師として招待されることは、家庭医療を専門とする者(特に外国人の)にとって最大級の名誉であろう。でも、(親しみを込めてまたファースト・ネームで呼ぶことにするが)Ianの著書に出会い、そしてIan本人から直接薫陶を受けることがなければ、今日の私は存在しない。
 彼と彼の著書から学んだお陰で、家庭医療がそれ自体で1つの独立した知識の体系を持つ専門分野であること、「患者中心の医療」がお題目や机上の空論ではなくて実践と研究に支えられた臨床医学の方法であること、そして、家庭医を目指すことが一生を賭ける価値のあるキャリアパスであることを理解し、自信を持って若い人たちに伝えることができた。教育の持つ力の大きさを身を持って感じている。
 カナダの研修医になるための試験(MCCEE)を受けにバンクーバーへ行って、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)の書店でIanの著書『A Textbook of Family Medicine』の初版(1989)に出会った時の衝撃は今でも鮮明に覚えている。当時この本を読まずにカナダで家庭医療専門医になることは考えられないほどスタンダードなテキストであり世界的にも名著と評されていた本だったが、日本で目にしたことはなかった。将来自分が目指そうとしている家庭医療が、こんなにも深い臨床医学の原理と実践からの知恵をしっかり基盤に持っていることに半ば圧倒される思いだった。
 幸いにも、地域基盤型家庭医療研修プログラムで有名だったUBCのレジデントになることができ、さらに幸せなことに、シニアレジデントになった年に選択研修としてオンタリオ州ロンドンにあるウェスタン・オンタリオ大学(UWO)へ行ってIanのもとで家庭医療の原理について学ぶ機会を得た。今から20年前のことだ。毎日彼とマンツーマンで彼の著書を読んでディスカッションしながら過ごした1ヵ月は、間違いなく私の人生のハイライトの1つと言ってよい。 ― ここで冒頭の言葉に戻るのだが、Ianとの問答は知的刺激に満ちていて、なおかつ穏やかで優しかった。
 本書の原書は、Ianの後継者であるUWO家庭医療学講座主任のThomas Freeman教授が共著者となって2009年に『Textbook of Family Medicine(第3版)』として出版された。Ianの死によって、これが彼の遺作になってしまったが、これからも家庭医療を学ぶ者に色褪せることない深い知恵と思索の源を与え続けるに違いない。
 家庭医療後進国という事情と、Ianの洗練された言葉遣いを適切に日本語で伝えることにかなり時間がかかってしまったが、北海道家庭医療学センターの草場鉄周先生の協力も得てようやく日本語版が出版されることになった。IanとTom、私と草場君、それぞれ後継者との2世代にわたる仕事になった。Ianの深い考えを日本語で読んでもらえることは私たちの大いなる喜びだ。本書は原書第3版第1部の全訳であり、下巻もできるだけ早期の出版を目指している。
 翻訳にあたっては、丁寧に選ばれた言葉を使って膨大な古今の人類の知恵と自らの深い考察を穏やかな語り口で伝えてくれるIanの人柄を大切にするため、本文は敢えて敬体(です・ます調)とした。彼の自宅の書斎には百科事典のような何冊ものOxford英語辞典があり、同じ意味でも異なった英語を使う時にはそこに彼の言葉へのこだわりがある。到底それには及ばないが、日本語でもできるだけ適切な別の言葉を探すことに努めた。本書で解説されるコンテクストやコミュニケーションなどの少数の例外を除き、曖昧なカナカナ日本語はできるだけ避けた。意訳ではなく、できるだけ正確に内容を訳出することに心がけた。そのため日本語としては十分こなれていないが、どうかご容赦頂きたい。気づいていない誤訳も含めすべて訳者の責任である。
 家庭医療学の書籍の出版に日本の出版社がまったく興味を示してくれなかった時代から一貫して私の翻訳を励まし、ここまで牽引してくれたぱーそん書房の山本美恵子氏、そして高山静氏の勇気ある決断と高い見識に心から感謝している。ありがとうございます。
 日本では総合診療専門医という名称で呼ばれる分野の専門性の重要な部分が、この家庭医療学に凝集されている。日本に住む多くの人たちが質の高いプライマリ・ケアを利用できるために、本書の内容を深く理解して実践する総合診療専門医が多数輩出することを祈っている。
 2013年5月
 残雪の峰々に桜が映える早春の福島にて
              葛西 龍樹
             

目次


第1部 基本原理


1 家庭医療学の起源

  ・死亡率と罹患率の変化
  ・専門細分化の進行
  ・一般医の時代
  ・専門細分化の時代
  ・行動科学の新たな発達
  ・変化する病院の役割
  ・マネージドケアと統合の時代
  ・General PracticeかFamily Medicineか
  ・臨床および学問の専門分野としての家庭医療学

2 家庭医療学の原理

  ・原理が意味するもの
  ・【葛】藤する役割
  ・ケアの継続性
  ・医師の仕事
  ・患者についての知識の蓄積
  ・ジェネラリストの役割
  ・人間的な規模
  ・家庭医療学は世界共通か

3 地域における病気

  ・病者役割と受療行動
  ・重篤な症状の過小報告と軽微な症状での受診
  ・セルフケアとその他の代替医療ケア

4 家庭医療のプロフィール

  ・プライマリ・ケアの分類
  ・ケース4.1 ケアのエピソード
  ・症 状
  ・診 断
  ・家庭医療における変動の要因

5 家庭医療学の哲学および科学的基盤

  ・科学におけるパラダイム変化
  ・医学におけるパラダイム変化
  ・古いパラダイムが遭遇する変則
  ・心身相関の治療的意味
  ・心身の変則としてのプラセボ効果
  ・生理学的経路
  ・免疫系の新しい知識
  ・新しいパラダイム
  ・家庭医療学の生物学的基盤
  ・自己組織化システム
  ・医学知識の疑問
  ・観察者の位置
  ・抽象化と経験(地図と土地)

6 病気、苦しみ、癒し

  ・患者の病気の経験
  ・苦しみ
  ・癒す者としての医師
  ・関 与
  ・癒しの道徳的およびスピリチュアルな側面
  ・道徳的次元
  ・苦しみの教育学
  ・癒す者の権威

7 医師-患者のコミュニケーション

  ・身体化
  ・コンテクスト
  ・コンテクストへの手がかり
  ・文化とコンテクスト
  ・文化的コンテクストの高低
  ・難しい人間関係
  ・面 接
  ・傾 聴
  ・つながりができる瞬間
  ・共 感
  ・鍵となる質問
  ・悪い知らせを伝える
  ・安心させること
  ・依 存





8 医療の方法

  ・診 察
  ・医療の方法の歴史
  ・近代的方法を改革する試み
  ・患者中心の医療の方法
  ・検 証
  ・患者中心の方法の学習
  ・患者中心の方法の評価
  ・家庭医療学における患者中心の方法
  ・症 状
  ・家庭医療における臨床診断:臨床問題解決の文法
  ・家庭医療のコンテクスト
  ・分 類
  ・手がかり
  ・仮 説
  ・探 索
  ・ルーチンの探索
  ・共通の理解基盤の探索
  ・ケア計画と治療
  ・臨床意思決定の外部因子
  ・誤りの同定

9 健康増進と疾病予防

  ・一般的原理
  ・健康増進と疾病予防
  ・健康とは何か
  ・正常の意味
  ・健康生成論(Salutogenesis)
  ・自己評価による健康と死亡率
  ・健康増進の連続性
  ・動機づけ面接
  ・スクリーニングと症例探索の評価
  ・エビデンスの解釈と適用上の問題点
  ・リスクの概念
  ・家族歴についての親戚の知識によるリスクの認識
  ・絶対リスク、相対リスク、治療必要数
  ・診療ガイドライン
  ・家庭医療における予防方略
  ・組織的ツール
  ・特殊な疾患に対する予防方略

10 健康と疾患における家族

  ・家族の規範
  ・家族とは何か
  ・家族の構造と機能における最近の変化
  ・「家族を考える」とはどういうことか
  ・健康と疾患に対する家族の影響
  ・家族生活のトラウマ
  ・家庭医が家族に働きかける方法
  ・家族会議
  ・家族ケアの教訓
  ・家族の普遍的な重要性


■■■下巻■■■


第2部 臨床の問題


11 急性咽頭痛
12 頭痛
13 疲労
14 高血圧
15 糖尿病

第3部 家庭医療学の実践


16 在宅ケア
17 診療記録
18 相談と紹介
19 保健専門職
20 地域サービス・ネットワーク
21 代替補完医療
22 診療管理

第4部 教育と研究


23 生涯自己教育
24 家庭医療の研究

マクウィニー 家庭医療学 下巻

個数:
マクウィニー 家庭医療学 下巻

[ 訳 ]  葛西龍樹 草場鉄周
[ 発行年 ] 2015年6月15日
[ 分類 ] プライマリケア医学
[ 仕様 ] A5判・266頁
[ 定価 ] 本体 3,200円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-15-4
[ 主な内容 ]
●原著はIan R. McWhinney先生とThomas Freeman教授の共著『Textbook of Family Medicine(第3版)』の第2部~第4部(第1部は上巻)。
●上巻で述べられた家庭医療学の基本原理が、実際の診療の中で、そして教育の現況の中で、どのように適用され展開されていくのかについて述べられている。
●通読することで、読者それぞれのコンテクストで利用できるアイデアやヒントになるだろう。


日本語版(下巻) 序文

 本書は、Ian R. McWhinney教授と彼の後継者であるウェスタン・オンタリオ大学(UWO)家庭医療学講座主任のThomas Freeman教授が共著者となって2009年に出版された原書『Textbook of Family Medicine(第3版)』の第2部、第3部、第4部の全訳である。2013年に出版された『マクウィニー家庭医療学(上巻)』(原書第1部の全訳)と合わせてこの原書すべての日本語版が完成した。彼の著作が日本語で広く読まれることは、1992年から彼の薫陶を受け、彼の勧めで日本での家庭医療学の発展を願ってきた訳者にとって大きな喜びである。
 この下巻は、上巻(原書の第1部)で詳しく述べられた家庭医療学の基本原理が、臨床の問題、実際の診療と実践、そして教育と研究で実際どのように適用・展開されるのかについて書かれている。これらの記述が膨大な参考文献をもとに、エビデンスを吟味する臨床的な視点と病気を持つ人に寄り添う人間的な視点とをバランス良く調和させながら、その過程で私たちが考えていかなくてはならない多くの課題も挙げながら、思慮深く書き進められている。通読することで読者それぞれのコンテクストで利用できるアイデアが必ず見つかるはずである。
 私がこの翻訳を終えて校正を進めている時期に一致して、一般社団法人日本専門医機構では、『「総合診療専門医に関する委員会」からの報告』を2015年4月20日に公開し、そこには『総合診療専門医 専門研修カリキュラム(案)』も掲載されている(https://www.japan-senmon-i.jp/document/150421.pdf)。
 「総合診療専門医に関する委員会」には私も委員として参画している。本書の翻訳を一部手伝ってくれた草場鉄周先生もオブザーバーとして参加している。今までの議論の過程で、私たちが1996年から一医療法人の事業として着手した家庭医養成の取り組みが、その基本となる価値観を正しく継承しながら日本全国で使われる専門研修カリキュラム案に反映され、日本の実情に合わせて進化してきていることに満足している。最終版のカリキュラムまでにはまだ多少の改訂はあるとは言え、日本では「総合診療専門医」と呼ばれることになったプライマリ・ケアの専門医をどのように養成したら良いかを多くの具体的な言葉で説明しているので、それを専門にしない人たちにも「総合診療専門医」がかなりイメージしやすくなったと思う。
 それとは対照的に、カナダで私が家庭医療のレジデント(日本では「専攻医」と呼ばれる後期研修医)として研修していた1990年代、カナダ家庭医学会認定研修プログラムのカリキュラムには4つのゴールが示されているだけだった。「家庭医は優れた臨床医である」、「家庭医療は地域を基盤とした専門分野である」、「家庭医は定義された診療対象にとっての資源である」、そして「患者-医師関係が家庭医の役割の中心である」。これだけである。でも、その後でよく指導医たちは「もちろんIan McWhinneyの本は読んでるよね」と付け加えたものだ。優れた臨床医とは何か、地域を基盤とするとはどういうことか、どうやって資源を活用できるか、患者-医師関係の何が問題か。こうしたことにレジデントたちは悩み自分で考えながら、そして同僚や指導医に問いかけながら研修したものである。その時にIanの本は大きな助けだった。それぞれの答えが研修する地域の実情によって違ってくることも、家庭医療学に本質的なこととして理解することができた。与えられるのを待っている、あるいはマニュアル化された研修とは対極にある、こうした教育もあるのだ。
 日本の総合診療専門医の専門研修カリキュラムはもっと多くの言葉で書かれているとは言え、日本では他の18の基本領域とは異なった種類の新しい専門分野であるので、専攻医のみならず指導医にも初めて出会う言葉やアプローチが少なくないだろう。医療における「パラダイムの転換」が必要な所以である。
 そうした今までの日本の医療にないテーマ(「患者中心の医療」などはその最たるものだろう)に遭遇した時に、既存の枠組みや手軽にメディアで流れている情報を答えとして満足するのではなく、是非この『マクウィニー家庭医療学』を読んで、しっかりとした基盤から自分のコンテクストに合わせてそのテーマを深く考えてもらいたい。本書には、医療の歴史の中でそのテーマがどのように扱われてきたか、そしてそれらがこれからどのように変化していくのかを考えるヒントが詰まっているはずだ。それを知らずに進むのは、何よりも医療の利用者にとって危険なことになる。本書1章の冒頭に書かれているように「医学に起こっている深刻な変化は、歴史的な目からみて初めてよく理解できます」というメッセージを理解してほしい。
 下巻についても、ぱーそん書房の髙山静氏、山本美惠子氏、近野さくら氏には大変お世話になった。上巻から一貫して私たちの翻訳を励まし、出版まで牽引して下さったことに心から感謝している。ありがとうございました。
 『マクウィニー家庭医療学』が、総合診療専門医の養成に関係するすべての人たち、そしてそれを支える人たちすべてに深く読み込まれ、それぞれの場で活用され、彼らを継続して勇気づける資源になることを願い続けたい。
 2015年5月
 新緑のグラデーションに包まれる薫風の福島にて
              葛西 龍樹


あとがき

 『マクウィニー家庭医療学(上巻)』の日本語版序文に書いたことだが、英国家庭医学会(RCGP)年次学術大会での講演に招かれてスコットランドのグラスゴーを訪問している時にIan McWhinney先生の訃報を受け取った。
 スコットランドに縁があり、あれから3年目になる2015年4月にエジンバラを訪れた。それはRCGPが私に最高名誉正会員・専門医(FRCGP)を授与することになったからである。さらにその翌週、エジンバラ大学で“Richard Scott Lecture”と呼ばれる講義をする栄誉にも恵まれた。Richard Scott教授は、エジンバラ大学で最初の(と言うことは世界で最初の)家庭医療学講座の教授になった人である。英国が国民保健サービス(NHS)を始めた1948年に、彼は初めて大学教育の一環としての家庭医療の診療・教育の拠点を市中の地域に開設した。それが発展し、1956年に世界で初めて家庭医療学の大学講座となったのである。その初代教授の名を冠した記念講義には、今まで著名な英国の家庭医が講師として招待されている。
 このように世界で最も伝統のあるエジンバラ大学の家庭医療学講座の主任教授は“James Mackenzie Professor of General Practice”と呼ばれ、ここにも歴史がある。本書24章「家庭医療の研究」に詳細が書かれているように、19世紀終わりから20世紀初頭にかけて、まだすべての医師がgeneral practitioner(古典的意味での「一般医」)として働いていた時代に、James Mackenzie卿は卓越した観察と記録を継続することで研究を行い、新しい時代のgeneral practitioner(現代的な意味での「家庭医」)の先駆けとなった。その彼の功績を顕彰して主任教授のポストにJames Mackenzieの名を冠しているのである。NHSができた当時、診療の質にまだかなりのばらつきがあった「一般医」が、Richard Scott教授たちが始めた「地域で医師を養成し、地域でプライマリ・ケアの研究を進める」という、画期的なシステムの構築によって新しい「家庭医」へと生まれ変わっていった歴史は、日本にとって大きな教訓である。
 23年前にIanがJames Mackenzieなど家庭医療学分野の先達について尊敬を込めて語るのを聴いていた私が、そのJames Mackenzieを讃える人たちが歴史の先駆けとして新しい「家庭医」を創り上げてきたエジンバラに招かれ、外国人として初めて伝統ある記念講義を行い、そこでIanの話をすることは、講義をする私にとってもそれを聴く英国の家庭医にとってもある種愉快で象徴的な出来事だった。家庭医療学の大きな歴史の輪、しかも螺旋状に上昇していく輪に連なる、「家庭医が関わるのは人間である」という原理を価値観として共有する人間と人間との絆を感じずにはいられない。
 改めて、こうしたすべてのことの始まりとなる、家庭医療学を深く学ぶ機会を与えてくれたIan McWhinney先生に深甚なる謝意を表したい。
 ウェスタン・オンタリオ大学(UWO)家庭医療学講座では、生涯にわたる彼の家庭医療学への貢献を顕彰するため“Ian McWhinney Lecture”を創設することになった。その最初の講義が今秋2015年9月に行われるという。講師は、世界家庭医機構(WONCA)会長のMichael Kidd教授である。幸い私もこの機会にUWOを訪問できることになり、友人でもあるMichaelの講義を聴くのを楽しみにしている。
 そして、その機会にこの『マクウィニー家庭医療学』上巻・下巻を携えて行き、今までの大いなる感謝を込めて共著者のThomas Freeman教授とIanの娘さんたちHeatherとJulieへそれらを手渡すという私の積年の夢が実現する。許されればIanと奥さんBettyの墓所を訪れ、私が辿ってきた家庭医療学の旅について報告しよう。
 2015年5月吉日
              葛西 龍樹
             

目次


第2部 臨床の問題


11 急性咽頭痛

  急性咽頭痛のマネジメント戦略
  小児の急性咽頭痛のマネジメント
  溶連菌感染の家族的見地
  急性喉頭蓋炎
  伝染性単核球症

12 頭 痛

  頭痛の分類
  片頭痛
  頭痛を持つ患者の評価
  頭痛の診断
  治 療

13 疲 労

  疲労を主訴とする患者の評価
  うつ病
  慢性疲労症候群/筋痛性脳脊髄炎

14 高血圧

  高血圧の自然歴
  高血圧とアテローム形成
  高血圧とうっ血性心不全
  高血圧のリスクファクター
  正常高値あるいは高血圧前症
  一次性高血圧と二次性高血圧
  血圧を測定する
  高血圧の検査
  高血圧の発見と追跡のために診療所を組織化する
  一般的な治療
  薬物療法
  小児の高血圧

15 糖尿病

  糖尿病の分類
  診断基準
  発生率と有病率
  病気の原因、発病機序、自然歴
  治療の効果
  糖尿病の個人と家族への影響
  糖尿病の子ども
  1型糖尿病の成人
  家庭医療での糖尿病の現れ方
  評 価
  治 療
  家庭医と糖尿病のある運転者


第3部 家庭医療学の実践


16 在宅ケア

  往診をする理由
  家庭での患者の評価
  在宅ケアの科学技術
  在宅ケアの質
  家庭内病院にかかる費用

17 診療録

  問題志向型診療録
  電子診療録システム

18 コンサルテーションと紹介

  コンサルテーション
  紹 介
  紹介の決定の理解
  プライマリ・ケアと2次ケアの境界面
  共有ケア





19 保健専門職

  看 護
  作業療法
  理学療法(物理療法)
  医療ソーシャルワーク
  臨床心理
  行動療法
  食事療法(栄養)
  薬 局
  足病治療
  チームの概念

20 地域サービス・ネットワーク

  公衆衛生
  子ども向けのサービス
  学校保健・指導サービス
  産業保健サービス
  精神保健サービス
  高齢者のためのサービス
  在宅ケアサービス
  自助・互助団体
  ボランティア
  主なサービスを探す

21 代替または補完医療

  何にとっての代替か
  代替医療のカテゴリー
  よくある代替診療

22 診療管理

  目標設定
  診療対象集団を定義する
  満たされていないニーズの評価
  需要の評価
  資源の評価
  実績の評価
  目標と方針の見直し
  診療管理に共通する欠陥
  意思決定過程
  マネージドケアの影響


第4部 教育と研究


23 継続自己学習

  読むこと
  他の教育資源
  自 覚

24 家庭医療の研究

  家庭医療学の科学的発展
  19世紀
  Mackenzieの研究
  20世紀の家庭医療学研究:原理とテーマ
  臨床的発見
  家庭医療における記述的研究の種類
  家庭医療の科学技術についての研究
  抽象化の問題
  検証の問題

子どもの感染症1

個数:
Dr.趙の診療ノート
子どもの感染症1
眼・耳・鼻・口・皮膚 など

[ 著 ] 趙 重文
[ 発行年 ] 2014年2月10日
[ 分類 ] 小児科 感染症
[ 仕様 ] B5判 本文153頁
[ 定価 ] 本体 3,200円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-10-9
[ 主な内容 ]
●臨床経験豊富な著者が、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科などの小児感染症の各疾患について、その特徴と経過をわかりやすくまとめている。
●医師や看護師、保健師、保育士、幼稚園教諭、校医など、子どもに接する皆さんの役に立つ内容。
●疾患に対する理解を深めるために、著者によるイラストをふんだんに取り入れて、楽しく見ながら学べる1冊。


はじめに

 本書は臨床経験豊富な現役の開業医(家庭医)である私の診療ノートから、読者の皆様に役立つような疾患を選んで1冊の本としてまとめたものです。臨床の現場で実際に働いておられる医療関係者だけでなく、子どもと接する機会のある職業の人、あるいは一般の人にも役立つような内容にしています。
 今回は小児感染症の中で眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科、泌尿器科疾患などについてまとめましたが、続編の要望があれば、インフルエンザや水痘、風疹など、小児の全身性感染症についてもまとめてみたいと思っています。
 本書が読者の皆様方の医療知識と臨床力のスキルアップの一助となれば幸いです。
 平成26年2月吉日
              趙 重文


目次


1.小児の眼感染症


・眼球と眼周囲の解剖
・眼感染症の諸疾患

  1 感染性結膜炎
    A.細菌性結膜炎
    B.ウイルス性結膜炎
    C.トラコーマ(クラミジア結膜炎)
    D.フリクテン性結膜炎
    E.化膿性結膜炎
  2 角膜の感染症
    A.角膜炎
    B.角膜真菌症
    C.再発性角膜ヘルペス
    D.コンタクトレンズ角膜炎
      (アカントアメーバ角膜炎)
  3 強膜の感染症:上強膜炎
  4 ぶどう膜炎
  5 涙嚢炎
  6 眼瞼の感染症
    A.麦粒腫
    B.眼瞼縁炎
    C.眼部単純疱疹
    D.眼部帯状疱疹
    E.眼窩蜂窩織炎
    参考 ・結膜の出血/・霰粒腫


2.小児の耳鼻咽喉感染症


・外耳道の解剖
・鼻の解剖
・口腔・咽頭の解剖
・耳鼻咽喉感染症の諸疾患

  1 耳の感染症
    A.耳介とその周囲の感染症
    B.外耳の感染症
    C.中耳の感染症
    D.内耳の感染症
  2 鼻の感染症
    A.鼻前庭炎
    B.急性上顎洞炎
    C.急性副鼻腔炎
    D.慢性副鼻腔炎
  3 口唇の感染症
    A.口唇ヘルペス
    B.口角炎
  4 歯肉・口腔の感染症
    A.歯肉アメーバ
    B.歯根膿疱
    C.口腔カンジダ症、鵞口瘡
    D.疱疹性歯肉口内炎
    E.急性化膿性耳下腺炎
    F.唾液管拡張症
    G.唾石症
    H.口腔底蜂窩織炎
  5 咽頭・扁桃の感染症
    A.咽頭炎
    B.扁桃炎
  6 喉頭の感染症
    A.急性喉頭蓋炎
    B.急性喉頭炎
    C.慢性喉頭炎
    参考 ・Ramsay Hunt症候群
       ・扁桃異物
       ・陰窩性扁桃炎
       ・咽頭ジフテリア





3.小児の皮膚感染症


・皮膚の解剖
・皮膚感染症の諸疾患

  1 おむつ関連疾患
    A.おむつ皮膚炎
    B.乳児臀部肉芽腫
  2 全身性に拡がりうる疾患
    A.伝染性軟属腫(俗称:水いぼ)
    B.伝染性膿痂疹(俗称:とびひ)
    C.膿痂疹様湿疹
    D.蜂窩織炎
    E.ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群
  3 局所性にみられる疾患
    A.尋常性舫瘡(俗称:にきび)
    B.壊死性舫瘡(痘瘡状舫瘡)
    C.癤
    D.癤腫症
    E.癰
    F.ボックハルト膿痂疹(表在性毛嚢炎)
    G.尋常性毛瘡
    H.粉瘤(アテローム)
  4 汗関連疾患
    A.汗疹
    B.汗孔周囲炎
    C.化膿性汗孔炎
    D.化膿性アポクリン汗腺炎
  5 真菌症
    A.頭部白癬
    B.体部白癬
    C.頑癬・陰股部白癬
    D.足白癬(俗称:みずむし)
    E.手白癬
    F.爪白癬
    G.白癬疹
    H.マラセチア感染症
    I.カンジダ症
    J.スポロトリコーシス
  6 動物や虫などによる咬刺傷
    A.哺乳類の咬刺傷
    B.虫の咬刺傷
    参考 ・成人の伝染性軟属腫
       ・ニキビダニ症
       ・毛嚢虫性痤瘡


4.小児の泌尿器感染症


・泌尿器の解剖
・泌尿器感染症の諸疾患

  1 尿路感染症
    A.単純性尿路感染症
    B.複雑性尿路感染症
  2 外陰部の感染症
    A.陰嚢白癬
    B.陰嚢カンジダ症
    C.外陰腟カンジダ症
    D.亀頭包皮炎
    E.精巣上体炎(副睾丸炎)
    F.非特異性外陰腟炎
    参考 ・精巣捻転症/・陰唇癒合


5.寄生虫


・微生物感染症

  1 寄生虫感染症
    A.線虫類
    B.条虫類
    C.吸虫類
  2 微生物感染症
    A.トキソプラズマ
    B.クリプトスポリジウム
    C.マラリア原虫
    D.ランブル鞭毛虫
    E.トリコモナス原虫
    F.アメーバ属
  3 その他の感染症
    A.細菌性赤痢
    B.皮膚結核症
    参考 ・顔面播種状粟粒性狼瘡

子どもの感染症2

個数:
Dr.趙の診療ノート
子どもの感染症2
重症感染症・全身性感染症・呼吸器感染症 など

[ 著 ] 趙 重文
[ 発行年 ] 2014年10月15日
[ 分類 ] 小児科 感染症
[ 仕様 ] B5判 本文196頁
[ 定価 ] 本体 3,500円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-18-5
[ 主な内容 ]
●子どもの感染症1の続編。重症感染症・全身性感染症・呼吸器感染症などの小児感染症の各疾患について、その特徴と経過をわかりやすくまとめている。
●病原体の主な感染経路などの基礎知識や細菌感染と抗菌薬についても解説。医師や看護師、保健師、保育士、幼稚園教諭、校医など、子どもに接する皆さんや診療に来る家族の知識の向上にも役立つ。
●著者によるイラストをふんだんに取り入れて、楽しく見ながら学べる1冊。


はじめに

 本書は『子どもの感染症【1】』の続編です。開業医に限らず外来診療をしていると、次々とさまざまな疾病で来院してくる患者さんに対して、1人に何十分も時間をかけて診察することは困難です。また、言葉だけでの説明では、理解し、納得してもらえない場合があります。私は以前から手書きの診療ノートの絵を患者さんに見せて疾患、症状の説明を行ってきました。例えば、手足口病、ジアノッティ・クロスティ症候群、ヘルパンギーナ、水痘などは、絵を見せるとすぐに理解してもらえます。ある患者さんとその家族に川崎病の絵を見せて「このような症状がみられたら川崎病が疑われます。すぐに来てください」と説明をしておいたことがありました。実際に川崎病が発症したときに患者さんの家族は私の絵と説明を思い出してすぐに来院し、川崎病の早期発見につながったという例もありました。
 本書は、そのような私のメモや絵でいっぱいの診療ノートから、日常診療でよく診る小児科の代表的な疾患、突発性発疹、水痘、りんご病等々を『子どもの感染症【2】』としてまとめました。医療関係者だけではなく、一般の方々の医療知識の向上にお役に立つことができれば幸いです。
 平成26年10月吉日
              趙 重文


目次


Ⅰ.基礎編


1.感染症の基礎知識

 1.病原体の主な感染経路
  1)空気(飛沫核)感染
  2)飛沫感染
  3)接触感染
  4)血液が媒介
  5)湿潤環境に関連
  6)昆虫媒介感染
 2.消毒・滅菌法
  1)主な消毒薬の殺菌領域と使用領域
  2)熱を利用した消毒法
 3.体 温
  1)測定部位による体温差と体温の日内変動
  2)健常者の体温上昇
  3)体温の年齢による変動
  4)女性の体温と妊娠時の体温
 4.熱 型
  1)稽留熱
  2)弛張熱
  3)間欠熱
  4)波状熱・再発熱
  5)周期熱
  6)分利性下熱
  7)渙散性下熱
  8)死の交差
  9)詐熱
  10)不明熱
 5.リンパ節腫大
  1)耳介前リンパ節
  2)耳介後リンパ節
  3)扁桃リンパ節
  4)顎下リンパ節
  5)頤下リンパ節
  6)頸部リンパ節
  7)肘関節上リンパ節
  8)腋窩リンパ節
  9)鼠径部リンパ節
  10)膝窩リンパ節
 6.感染症に関係する血液検査
  1)白血球数
  2)白血球の血液像
  3)血小板数
  4)CRP
  5)赤沈
  6)血清アミロイドA
  7)血中プロカルシトニン
 7.グラム染色と有効抗菌薬
 8.ヒトの常在細菌叢と菌交代
 参考
  ・N95マスク

2.小児の細菌感染と抗菌薬

 1.細菌性肺炎
 2.インフルエンザ菌感染症
  A.有莢膜b型インフルエンザ菌
   1)生後3ヵ月~2歳の児
   2)2~6歳の児
   3)全年齢を通して
 3.肺炎球菌感染症
  A.肺 炎
  B.髄膜炎
  C.中耳炎
 4.ブドウ球菌感染症
  A.黄色ブドウ球菌
   1)ブドウ球菌そのものの侵襲による症状
   2)毒素による症状
  B.表皮ブドウ球菌
 5.髄膜炎菌感染症
 6.嫌気性菌感染症
  A.無芽胞嫌気性菌による感染症
 7.破傷風
 8.抗菌薬
  A.βラクタム系薬
   1)モノバクタム系薬
   2)ペニシリン系薬(ペナム系薬)
   3)セフェム系薬
   4)ペネム系薬
   5)カルバペネム系薬
  B.アミノグリコシド(アミノ配糖体)系薬
  C.マクロライド系薬
  D.ホスホマイシン
  E.リンコマイシン系薬
  F.テトラサイクリン系薬
  G.クロラムフェニコール系薬
  H.ペプチド系薬
   1)グリコペプチド系薬
   2)ポリペプチド系薬
  I.ニューキノロン系薬
  J.ST合剤
  K.サルファ剤
 9.抗結核薬
 参考
  ・エンピリック・テラピー
  ・抗菌薬の移行性


Ⅱ.疾患編


1.小児の重症感染症

 1.髄膜炎
  A.無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)
  B.薬剤性髄膜炎
  C.細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)
   1)細菌性髄膜炎一般について
   2)ブドウ球菌や髄膜炎菌による髄膜炎について
  D.結核性髄膜炎
  E.クリプトコッカス髄膜脳炎
 2.脳 炎
  A.単純ヘルペス脳炎
  B.非ヘルペス性急性辺縁系脳炎
  C.日本脳炎
  D.インフルエンザ脳炎
  E.急性散在性脳脊髄炎
 3.敗血症
  1)新生児~乳児
  2)幼児~学童
  参考
   ・Neck-flexion test・Jolt accentuation
   ・Waterhouse-Friederichsen症候群
   ・辺縁系
   ・日本脳炎ワクチン
   ・プロカルシトニン

2.小児の全身性感染症

 1.連鎖球菌感染症
  A.A群β溶血性連鎖球菌感染症(化膿性連鎖球菌感染症)
   1)扁桃炎
   2)猩紅熱
   3)皮膚感染症
   4)急性糸球体腎炎
   5)劇症型溶血性連鎖球菌感染症
   6)リウマチ熱
   7)アレルギー性紫斑病
        ・シェーンライン-ヘーノホ紫斑病
  B.B群β溶血性連鎖球菌感染症
 2.川崎病
 3.突発性発疹
 4.伝染性紅斑(りんご病)
 5.手足口病
 6.ジアノッティ・クロスティ症候群
 7.ジアノッティ病
 8.水痘(水疱瘡)
 9.帯状疱疹
 10.単純ヘルペスウイルス感染症
  A.HSV-1型感染
   1)口唇ヘルペス、アフタ性口内炎
   2)疱疹性瘭疽、疱疹性爪周囲炎
   3)疱疹性歯肉口内炎
   4)カポジ-水痘様発疹症
        (疱疹性湿疹、急性痘瘡様膿疱症)
   5)ヘルペス性脳炎
   6)ヘルペス性角膜炎
   7)性器ヘルペス
 11.風 疹
  1)先天性風疹症候群
 12.麻 疹
 13.流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
 14.反復性耳下腺炎
 15.デング熱
 参考
  ・紫斑病性腎炎
  ・大人の伝染性紅斑
  ・手足口病の各病原体ウイルスの特徴
  ・手足口病と類似した症状を呈する疾患の鑑別
  ・水痘と妊婦
  ・帯状疱疹の発疹の出現部位
  ・ラムゼー・ハント症候群
  ・不全型ハント症候群
  ・妊婦の風疹
  ・成人麻疹
  ・異型麻疹
  ・予防接種




3.小児の呼吸器感染症
  解 剖
  痰の種類と疾患
  呼吸器感染症の諸疾患

 1.かぜ症候群(感冒、急性鼻咽頭炎)
 2.呼吸困難・喘鳴
  A.呼吸困難
   1)吸気性呼吸困難
   2)呼気性呼吸困難
   3)呼吸面積の低下による呼吸困難
  B.喘 鳴
   1)吸気性喘鳴
   2)呼気性喘鳴
   3)特殊な喘鳴(先天性喉頭喘鳴)
  C.クループ
   1)急性喉頭蓋炎
   2)ウイルス性クループ
   3)痙性クループ
   4)喉頭ジフテリア
 3.急性細気管支炎
 4.急性気管支炎
 5.慢性気管支炎
 6.喘息様気管支炎
 7.ウイルス性肺炎
 8.RSウイルス感染症
 9.アデノウイルス感染症
  A.かぜ症候群
  B.咽頭結膜熱(プール熱)
  C.流行性角結膜炎
  D.ウイルス性下痢症
  E.出血性膀胱炎
 10.マイコプラズマ肺炎
 11.百日咳
 12.気管支喘息
 13.アスピリン喘息
 14.インフルエンザ
  A.インフルエンザA型
   1)不連続抗原変異
   2)連続抗原変異
  B.インフルエンザB型
  C.インフルエンザC型
 15.結 核
  A.初感染
  B.一次結核(初感染結核)
  C.二次結核
 16.アスペルギルス症
  A.アスペルギローマ(肺菌球症)
  B.組織侵襲型アスペルギルス症
  C.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
 17.クラミジア感染症
  A.クラミジア・トラコマチス感染症
   1)新生児封入体結膜炎
   2)クラミジア・トラコマチス肺炎
  B.クラミジア・ニューモニエ感染症
  C.クラミジア・シッタシ感染症(オウム病)
 18.クリプトコッカス症
  1)肺クリプトコッカス症
  2)中枢神経クリプトコッカス症
  3)全身性クリプトコッカス症
 19.レジオネラ症
  A.レジオネラ肺炎(在郷軍人病)
  B.ポンティアック熱
 参考
  ・咳と痰による生体防御作用
  ・咳による体力消耗
  ・新生児~生後数ヵ月の幼若乳児の感染
  ・喘息増悪(喘息悪化)
  ・結核感染の危険性が高い状況
  ・結核菌について
  ・初期悪化

4.小児の心血管感染症

 1.心筋炎
 2.心膜炎
 3.感染性心内膜炎
 4.肋軟骨炎

5.小児の消化器系感染症
  解 剖
  消化器系感染症の諸疾患

 1.乳児下痢症
 2.ウイルス性下痢症
  A.ノロウイルス感染症
  B.ロタウイルス感染症
 3.食中毒
 4.細菌性腸炎
  A.病原性大腸菌感染症
  B.サルモネラ症
  C.腸炎ビブリオ感染症
  D.黄色ブドウ球菌感染症
  E.カンピロバクター感染症
  F.ボツリヌス菌感染症
   1)乳児ボツリヌス症
 5.ウイルス性肝炎
  A.A型急性肝炎
  B.B型急性肝炎
   1)母子感染(垂直感染)
   2)小児期の水平感染の特殊型(ジアノッティ病)
   3)小児のB型急性肝炎
   4)B型肝炎ウイルスマーカー
   5)HBウイルス腎症
  C.劇症肝炎
  D.C型急性肝炎
  E.D型急性肝炎
  F.E型急性肝炎
  G.G型急性肝炎
 6.急性虫垂炎
 7.急性膵炎
 参考
  ・Silent B型慢性肝炎
  ・Rosenstein徴候
  ・急性膵炎の重症化


Ⅲ.注射法と予防接種


1.小児の注射法

 A.皮下注射
  1)上腕部
  2)大腿部の外側広筋(大腿四頭筋外側)部
 B.筋肉内注射
  1)大腿部の外側広筋(大腿四頭筋外側)部
  2)上腕部の三角筋
  3)臀筋の上、外1/4
 C.皮内反応
 D.皮内注射
 E.BCG接種
 F.スクラッチテスト
 G.プリックテスト

2.予防接種

 A.生ワクチン
 B.不活化ワクチン
参考
 ・坐骨神経幹麻痺
 ・筋肉内注射の利点、その他

高齢者のための薬の使い方 ストップとスタート

個数:
高齢者のための薬の使い方
ストップとスタート

[ 編集 ] 秋下 雅弘
[ 発行年 ] 2013年6月1日
[ 分類 ] 老人医学、プライマリケア医学
[ 仕様 ] B5判 本文182頁
[ 定価 ] 本体 3,600円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-07-9
[ 主な内容 ]
●本書は高齢者薬物療法の具体的手法を提供することを目的としています。
●病態・領域別に中止すべき薬剤のリスト(ストップ)と処方を考慮すべき薬剤のリスト(スタート)を表の形でわかりやすく掲載しています。
●高齢者の医療の現場でちょっと悩んだときに役立つ書籍です。


序文

 高齢者では薬物有害作用が出やすく、薬物動態・薬力学の加齢変化と相互作用、服薬管理能力を考慮して薬の量と数にさじ加減が必要である。また、重篤な薬物有害作用が出やすい、あるいは重篤でなくても有害作用の頻度が高い、期待される効果を有害作用のリスクが上回るという点から、高齢者に対して慎重な投与を要する、あるいは投与を控えるべき薬剤が存在する。米国のビアーズリスト1)やその日本版である「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」(日本老年医学会2005年)2)が知られるが、欧州からも最近、STOPP3)が発表された。このグループは同時に、START3)という高齢者でも適切に使用を考慮すべき薬剤のリストを発表した。本来使われるべき薬剤が、高齢者だからというような非医学的理由で処方されない事態は回避すべきであり、リスクとベネフィットのバランスを考えた処方が求められる。
 本書は、実地医家に高齢者薬物療法の具体的手法を提供することを目的としている。趣旨を明快にするために、上述したSTOPPとSTARTを真似て、病態・領域別に、ストップ(中止を考慮すべき薬剤のリスト)とスタート(処方を考慮すべき薬剤のリスト)を作成し、各項の目玉とした。執筆陣は各分野の専門家であるが、その多くは厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)、高齢者に対する適切な医療提供に関する研究(H22-長寿-指定-009)研究班(研究代表者・秋下雅弘)の研究分担者・協力者であり、リストも研究班内で議論して絞り込んだ。このように、リストは十分なエビデンスによるものではないが、専門家が既存のリストに最新の知見を補足し、議論を加えたコンセンサスによるものである。
 項目も実践を重視し、老年医学的に重要でも有効な薬物介入が期待できないもの、高齢者に特徴的な薬の使い方が特にないもの、および急性疾患は省いた。また、高齢者医療の現場は、外来から急性期病院、介護施設、在宅医療まで幅広い。したがって、検査に頼らず、大抵は問診と診察だけで薬の調節を行う状況を念頭においた。本書がカバーしている領域は限られているが、さまざまな高齢者医療の現場で、ちょっと悩んだときに助けになるものと信じている。
 平成25年5月吉日
秋下雅弘

●文 献
1) American Geriatrics Society 2012 Beers Criteria Update Expert Panel. American Geriatrics Society updated Beers Criteria for potentially inappropriate medication use in older adults. J Am Geriatr Soc 60:616-631, 2012.
2) 日本老年医学会(編):高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2005.メジカルビュー社,東京,2005.
3) Gallagher P, Ryan C, O'Mahony D, et al:STOPP(Screening Tool of Older Person's Prescriptions) and START(Screening Tool to Alert doctors to Right Treatment). Consensus validation. Int J Clin Pharmacol Ther 462:72-83, 2008.
             

目次


1.高齢者に対する薬物療法のポイント


1.処方のポイント1:量と数のさじ加減 (秋下雅弘)

  Ⅰ.薬物動態と薬力学の加齢変化
  Ⅱ.投与量の調節
  Ⅲ.多剤処方の問題点
  Ⅳ.多剤処方の対策

2.処方のポイント2:管理を考えた処方 (秋下雅弘)

  Ⅰ.服薬管理能力の把握
  Ⅱ.処方の工夫
  Ⅲ.処方・服薬情報の管理:多職種連携と一元管理

3.服薬支援のポイント1:服薬指導 (清野敏一)

  Ⅰ.高齢者の特徴
  Ⅱ.高齢者への服薬指導上の注意点
  Ⅲ.高齢者の服薬に関する問題点
  Ⅳ.高齢者の服薬コンプライアンス低下の要因と対策

4.服薬支援のポイント2:支援ツール、剤形 (倉田なおみ)

  Ⅰ.加齢や障害などにより手指の運動機能が低下している
    患者に対する服薬支援
  Ⅱ.高次脳機能障害に対する段階的服薬指導
  Ⅲ.嚥下障害および経管投与に対する対応


2.生活習慣病の治療


1.高血圧 (江頭正人)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

2.脂質異常症 (荒井秀典)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

3.糖尿病 (梅垣宏行)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

4.骨粗鬆症 (小川純人)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

5.慢性閉塞性肺疾患(COPD) (山本 寛)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際


3.老年症候群の治療


1.認知症1:記憶見当識障害 (遠藤英俊、山口 潔)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

2.認知症2:行動・心理症状(BPSD) (遠藤英俊、山口 潔)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

3.抑うつ (山口 潔)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

4.不 眠 (亀山【祐】美)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

5.転 倒 (神﨑恒一)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際





6.めまい・ふらつき (小島太郎)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

7.下【腿】浮腫 (小島太郎)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

8.腰 痛 (石井伸弥)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

9.嚥下障害・誤嚥 (鈴木瑞恵、大類 孝)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

10.低栄養 (【葛】谷雅文)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

11.食欲低下 (須藤紀子)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

12.便 秘 (須藤紀子)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

13.頻尿・尿失禁 (井上正浩)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際


4.その他の治療


1.心房細動 (江頭正人)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

2.慢性心不全 (江頭正人)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

3.慢性腎臓病(CKD) (井上正浩)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

4.脳梗塞(再発予防) (鈴木裕介)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

5.冠動脈疾患 (荒井秀典)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

6.関節リウマチ (江澤和彦)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

7.変形性膝関節症 (石井伸弥)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

8.パーキンソン病 (荒井啓行)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際

9.漢方薬について (秋葉哲生)

  Ⅰ.治療前に
  Ⅱ.治療の実際


睡眠

個数:
睡眠

[ 訳 ] 郭 哲次
[ 発行年 ] 2015年5月1日
[ 分類 ] 精神医学
[ 仕様 ] A5判 本文156頁
[ 定価 ] 本体2,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-22-2
[ 主な内容]
●A Very Short Introductionシリーズ「Sleep」の訳本。
●コンパクトながらも、睡眠に関する最新の知識が満載。
●医療従事者に最適な入門書。



日本語版あとがき

 本書は、Steven W. Lockley & Russell G. FosterのSLEEP:A Very Short Introduction(Oxford University Press, 2012)の本文を全訳したものです。
 原著者のLockleyとFosterは共に睡眠科学の中でも時間生物学領域の先端的研究の第一人者で、Fosterは現在、Oxford大学Brasenose Collegeの概日神経科学部門教授で、概日神経生物学、光受容体生物学を専門としています。LockleyはHarvard大学大学院准教授(睡眠・概日リズム障害部門)で、ヒトの概日リズム障害の生理学的、疫学的研究などに携わっています。
 昨今、電子機器が溢れ、私たちはその利便性を享受する一方で、夜遅くまで、テレビの視聴、テレビゲーム、ネットサーフィンに興じ、大切な睡眠時間をじわじわと侵食され、また日々の生活や雑用に追われ、ややもすると、眠る時間を切り詰め、あるいは不眠に陥り、日中の眠気のため、仕事や学業に支障をきたす場合が少なくありません。「睡眠」に関する知識は、私たちの日常生活には不可欠で、近年「睡眠」に対する関心がとみに高まってきています。
 睡眠のメカニズムはどうなっているのか? どのようにしたら効率のよい安らかな睡眠がとれるのか? 睡眠を切り詰めると私たちの身体にはどういう害があるか? 海外旅行の時差ぼけの賢い解消法は? 夢は見ない方がよいのか? 睡眠と病気はどういう関係にあるのか? など、日常生活の中で、睡眠にまつわるさまざまな疑問が次々と湧いてきます。
 本書は、1.睡眠についての歴史的変遷、2.睡眠の発生と制御(睡眠の基本構造)、3.眠る脳(睡眠発生に関係する脳構造と神経伝達物質のシステム)、4.睡眠の意味(動物の睡眠から睡眠の意味を考える)、5.睡眠の7幕(ヒトの一生と睡眠)、6.睡眠が障害されるとき(さまざまな睡眠障害)、7.睡眠と健康、8.睡眠と社会、9.24時間社会という、9項目のテーマで構成され、LockleyとFosterは、このコンパクトな紙面の中で睡眠について順を追って詳しく説明し、また、単なる知識を得るためのテキストに終わらず、むしろ健やかな睡眠をとるための啓発書として、現代社会やその中で暮らす私たちはどうあるべきかを読者に語りかけ、具体的かつ懇切丁寧に説明し、私たちの日常の疑問にも答えてくれます。
 学生や一般読者、医学をこれから学ぼうとする方々、医師、看護師、保健医療に携わる保健医療専門職など医療の仕事に従事する方々にとって、睡眠に関する基礎知識を一通り知るうえでは最適の入門書です。
 また、NHKで2012年から放映している番組「スーパープレゼンテーション」はTED ConferenceのTED Talkから選択されたものですが、原著者の1人のFosterは、2013年8月に、TED Conferenceの姉妹版であるTED GlobalにおいてSpeakerを行っていて、TED Talk「Why we sleep?(Russell G. Foster)」という魅惑的な講演は、YouTubeでいつでも視聴することができます。
 なお、第9章の中の「時差ぼけは本当か?」の部分については、今回の邦訳にあたりOxford University Press社と原著者の御厚意で、図および本文が一部変更され、新たに改変されたものを翻訳致しました。文章の一部や単語の変更はありますが、オリジナルのものと内容や意味のうえでの大きな差異はありません。また、翻訳にあたり、本文欄外に用語、人名に関する脚注をできるだけ多く入れるように心がけました。
 近年、睡眠研究の進歩は目覚ましく、さまざまなことがわかってきています。世界の中でもとりわけ日本は睡眠研究のメッカで、最先端研究が行われ、また、研究者の手になる睡眠に関する参考書や解説書もたくさんあります。今回の翻訳にあたり、これらの多くの書籍や文献を参考にさせて頂きました。この一部を、原著者による参考文献以外に、参考図書リストとして巻末に掲載しました。なお、翻訳にあたり、細心の注意を払ったつもりですが、誤訳や用語の誤りなどお気づきのことがありましたら、御指摘頂ければ幸いです。
 最後に、本書を翻訳する機会を与えて頂いた株式会社ぱーそん書房社長山本美惠子さん、とても丁寧に校正および編集作業をして頂いた近野さくらさんに、この場を借りて心より御礼申し上げます。
 平成27年5月吉日
              郭 哲次


目次

1.睡眠についての歴史的変遷


2.睡眠の発生と制御―基本構造

  脳波
  夢
  睡眠・覚醒制御の2プロセスモデル
  両プロセスが引き起こす最悪の事態―夜更かしが過ぎると
  睡眠慣性―朝の目覚めの問題
  昼食後に眠くなるが、床に就くと眠くないのはなぜか?
  あなたはひばり型かふくろう型か? 朝型と夜型
  光、概日リズム、メラトニン、睡眠と覚醒
  まったく睡眠をとらないとどうなるか?
  寝不足になると?

3.眠る脳

  視交叉上核と分子時計
  ホメオスタシス性制御機構
  睡眠と覚醒の脳領域と神経伝達物質
  覚醒の神経伝達物質
  NREMとREM睡眠の発生
  NREM-REM睡眠フリップ・フロップ
  複数の睡眠遺伝子と複数の睡眠・覚醒パターン

4.睡眠の意味

  すべての動物が眠るのか?
  哺乳類
  鳥
  爬虫類と両生類
  魚
  無脊椎動物
  哺乳類全体の睡眠時間の相異
  動物はなぜ眠るのか?
  細胞修復―睡眠は、重要な細胞成分を修復する
  エネルギー維持―睡眠はエネルギー消費を
           減少させるように進化してきた
  脳の能率向上―睡眠は学習と記憶の強化のために
                   進化してきた
  睡眠vs休息活動パターン



5.睡眠の7幕

  妊娠期間の睡眠
  新生児の睡眠
  子どもの睡眠
  思春期と青年期の睡眠
  中年期と更年期
  老年期の睡眠
  認知症

6.睡眠が障害されるとき

  不眠症
  睡眠関連呼吸障害
  過眠の中枢神経系の原因
  概日リズム睡眠障害
  睡眠時随伴症
  睡眠関連運動障害

7.睡眠と健康

  睡眠と安全
  睡眠と心疾患
  睡眠と代謝
  睡眠と免疫機能
  睡眠と悪性腫瘍
  睡眠、メンタルヘルス、神経変性疾患

8.睡眠と社会

  睡眠と運転
  睡眠とカフェイン
  睡眠と学校
  睡眠と仕事
  睡眠と社会

9.24時間社会

  なぜシフトワークが問題か?
  時差ぼけは本当か?
  シフトワークと時差ぼけの対処
  シフトワークは、健康にどんな影響があるか?
  シフトワークと時差ぼけと悪性腫瘍
  連続体としての睡眠と概日リズムの破綻
臨床 外国人外来対応マニュアル

個数:
医師・看護師必読
臨床 外国人外来対応マニュアル

[ 著 ] 小林 米幸
[ 発行年 ] 2015年3月10日
[ 分類 ] 臨床医学一般
[ 仕様 ] B6判 本文182頁
[ 定価 ] 本体2,500円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-21-5
[ 主な内容]
●外国人医療に関する最新の法制度や医療制度を踏まえた外国人患者対応マニュアル。
●医師・看護師・メディカルスタッフのための、現場で役立つ知識が満載。診察するうえでネックになる問題点についてわかりやすく解説している。
●AMDA国際医療情報センターに寄せられたトラブルケースも数多く紹介。


はじめに

 医療現場の医療職の立場から総合的に外国人医療について書かれた書籍が存在しなかったことから、2002年に白衣のポケットに入れていつでも持ち運べるサイズの「外国人患者診療看護ガイド」を現エルゼビア・ジャパンより出版させて頂いた。しかしながら外国人をめぐる医療機関での混乱は増え続けたため、特定非営利活動法人(NPO法人)AMDA国際医療情報センター(以下:AMDA国際医療情報センター)に寄せられた外国人関連の医療・医事相談の実例を加えて、教科書的に臨床の現場で使って頂ける1冊として2006年に永井書店より「医師・看護師・コメディカルに役立つ外国人患者への外来対応マニュアル」を出版させて頂いた。この本を書き上げたとき、これでもう外国人医療に関する本を新たに書くことはないだろうと思った。しかしながら2006年以降、外国人医療に直接関係する大きな法制度の変化がいくつか認められた。具体的な内容は後述するとして箇条書きにすると、①法務省による外国人登録制度の廃止と新たな在留管理制度の創設、 ②同じく法務省による医療滞在ビザの創設、 ③厚生労働省(以下 :厚労省)による外国人患者受け入れ医療機関の認証制度の創設、④経済連携協定による外国人看護師、介護福祉士の受け入れ、である。さらに医療制度の変化も少なくなく、それは①公的保険制度における後期高齢者医療制度の創設、②結核予防法の廃止に伴う結核の感染症法2類感染症への統合、③基本健診の廃止と特定健診の創設、④ポリオ不活化ワクチンの導入、などである。さらに AMDA 国際医療情報センターの各言語の相談事業(医療機関からの電話通訳を含む)が午後5時から午後8時までに延長された。
 以上から、現状に合ったより正確な情報を提供するには過去の自著の内容、特に法制度および医療制度の内容について大きく変更せざるを得ないと思い、永井書店に連絡をしたところ、2006年に編集を担当してくださった東京支店が独立したぱーそん書房をご紹介頂いた。そして2006年発行の「医師・看護師・コメディカルに役立つ外国人患者への対応マニュアル」の内容に修正・変更する形で新たな書籍として発行することができることとなった。関係者の方々には心から感謝する次第です。
 なお、本書の中の「ケース」は主に外国人医療に関する無料医療・医事電話相談、電話通訳を9ヵ国語で受け付けているAMDA国際医療情報センター東京オフィスと同センター関西オフィスにかかってきた年間約5,000件に迫る電話相談の中から相談者のプライバシーに十分に配慮して実例として抜粋した。相談者には外国人患者も日本の医療機関、医療従事者もさらには行政に所属する人たちも含まれており、すなわち外国人の側と受け入れ側である日本側からの両者の相談が含まれている。相談の内容、いきさつについては相談者の訴えを「状況を正しく把握しているもの」という前提で捉えてコメントを加えた。なにぶん、電話相談という手段故に相談者の言い分が誤解であった、あるいはデマであったということも危険性としてないわけでもないということも、十分承知のうえであるということをご了承願いたい。
【こんなとき、どうする ― 外国人患者トラブルケース紹介】
 本書の随所に挿入される「ケース」は、AMDA国際医療情報センターに2001年4月以降寄せられた電話相談より抜粋、関係者のプライバシーに極力配慮しつつ、内容は一言一句、記録どおりに忠実に掲載した。
 各々についてコメントを加え、さらにキーワードを4つ以内で書き出し、検索しやすくした。
 ●ケース1:AMDA国際医療情報センター
 ・京都市のアメリカ人女性より
 昨年紹介してもらった○○医院の情報をもう一度教えてもらえないか。内科に行きたいので英語が通じるところを紹介してほしい。
 ○○医院の対応:○○医院へ電話をかけ、名前(AMDA国際医療情報センター)を名乗ったところ、「何をするところですか。もうかけてこないでほしい」と言われたので、アメリカ人女性にその旨伝えた。
 AMDA国際医療情報センターも外国人の医療・医事相談組織として関係者の間では知名度が高くなってきたが、まだまだ医療機関における知名度は低い。残念であるが医療機関にこのような対応をされることもある。同センターの職員の志気が下がる一言である。

あとがき

 昨今の人口減少問題、出生数の減少問題は日本の労働力減少に直結し、日本という国の斜陽の時代を迎えるのではないかと言われている。由々しき事態である。理解しやすいのはこの「労働力の低下」を外国人労働者で補おうという発想であり、一方では各国が二国間貿易協定の目玉として日本に望んでいるのが、自国の労働者の大量受け入れである。相次いで発展途上国から外国人労働者が入ってくるとなると日本の社会も彼らの受け入れのための工夫をせざるを得ないだろう。いい意味で日本社会の国際化が図られるべきと考える。
 1980年頃から始まったインドシナ難民のわが国への受け入れは、受け入れ施設の1つが置かれた神奈川県県央地区においてさまざまなトラブルを引き起こした。丁寧に当時の記録をたどり、どのように対応したのか、どのあたりが問題点として残ったのかを解析することは、今後予想される外国人の大量流入に医療を含めたさまざまな分野でどのように備えるべきかのヒントをくれるものと考えるが、なされていないのは誠に残念至極である。類似したトラブルが日本全国で将来起こりうるからであり、それを未然に防ぎ、共生の社会を築くには当時のトラブルの総括と今後の提言が欠かせないからである。要するに一人ひとりの医師、看護師、コメディカルの努力では外国人医療の問題も支え切れないのであり、情報の共有と受け入れのためのシステムづくりが必要ということである。
 外国人医療は日本の少子高齢化による労働力不足を補うための大量の外国人労働者の誘致、2020年の東京オリンピック開催を控えて外国人観光客のさらなる増加など、国、経済界を挙げた取り組みの中で今、大きな曲がり角を迎えようとしている。
 平成27年3月吉日
              小林 米幸


目次


■はじめに

 ・こんなとき、どうする―外国人患者トラブルケース紹介

【1】 なぜ「外国人医療」が医療機関および医療従事者に
          とって見過ごせない問題であるのか

1. わが国における外国人に関する各種統計からみた
                「外国人医療」の必要性
2. 外国人医療をめぐる変遷
3. 地域医療の第一線である開業医レベルで外国人の
     プライマリ・ケアを担わなければならない理由

【2】 2006年以降の外国人医療に関係する法制度の改変

1. 外国人登録法の廃止と新たな在留制度の創設
2. 医療滞在ビザの創設
3. 外国人患者受け入れ医療機関認証制度
4. 経済連携協定(EPA)による外国人看護師
               ・介護福祉士の受け入れ

【3】 外国人を診ることに法律的問題はないのか

1. 密入国
2. 不法滞在

【4】 外国人を診察していくうえで問題になることは何か?

1. 患者の国籍
2. 医療と文化
3. 医療制度の違い
4. 医療費
5. 疾患の違い
6. 輸入感染症

【5】 コミュニケーションの諸問題

1. 医療機関の外部掲示
2. 医療機関の内部表示
3. 受付
4. 診察室にて

 1) まず名前を名乗ろう
 2) ゆっくり、平易な日本語で話しかけてみよう
 3) 「はい」の返事に要注意
 4) 外国人も日本の医療システムの中に取り込んで
                    いくことが肝要

5. コミュニケーションが取れないときの補助手段

 1) 翻訳グッズ
 2) 通訳について

6. 通訳の上手な利用方法について

 1) 通訳としての能力は千差万別
 2) 通訳と患者の関係、連絡先を確認しておくべき
 3) 上手に医療側のペースで通訳を誘導する
 4) 通訳業務は卓球の球のようなものであってほしい
 5) 診療時間のロスを少なくするために


【6】 医療に影響を与える文化・習慣、考え方の違い

1. むやみに頭をなでてはいけない
2. イスラム女性の診察には女性医師というのが原則
3. 身体を見られることが恥ずかしい
4. 女性の診察を行うときには必ず女性スタッフに
                   付いてもらう
5. 着飾って医療機関に行く
6. タイ人のネックレス
7. お産に対する考え方
8. 自分の血液型を知らない
9. 子どもの肥満について
10.食事に関するタブー
11.アルコール類について
12.ビタミンに対する信奉
13.点滴に対する信奉
14.割礼
15.薬の使用方法について
16.上座部仏教(いわゆる小乗仏教)のお坊様を診察する
                     ときには
17.ほくろから生える毛は剃らない
18.コインで身体を強く擦り付ける
19.刺青
20.「あつい」という表現
21.慢性疾患に対する考え方
22.インフォームド・コンセントと人権

【7】 食事指導で注意すべきこと





【8】 日本の医療と海外の医療の違い

1. 国民皆保険制度

 1) 処方日数に縛りがある
 2) 処方できる薬剤は病名により制限されている
 3) 薬剤の1日処方量に制限がある
 4) 病名により検査にも縛りがある
 5) 公的保険では適用にならない医療がある

2. 医療機関の受診の仕方の違い
3. 医師と患者の関係の違い
4. 予防接種に関する違い

【9】 医療費の問題

1. 外国人医療の難しさは医療費にあり
2. 外国人でも利用できる日本の医療・福祉制度とその関連事項

 1) 健康保険
 2) 国民健康保険
 3) 後期高齢者医療制度
 4) 生活保護法
 5) 結核に関する法律
 6) 労災保険
 7) 児童福祉法第22条―出産に関する助成制度
 8) 乳幼児の予防接種
 9) 行旅病人及行旅死亡人取扱法
 10) 自治体が主催する各種検診
 11) 母子手帳
 12) 特定疾患の医療費助成(特定疾患治療研究事業)
 13) 身体障害者福祉法による身体障害者手帳の交付
 14) 精神保健福祉法措置入院
 15) 養育医療(母子保健法第16条)
 16) 乳幼児医療費助成制度

3. 外国人医療に関して医療機関が利用できる制度
4. 民間損害保険、海外民間保険を持った患者の受け入れについて

 1) 民間損害保険、海外民間保険は医療費の未納問題とは無縁
 2) 英文証明書を簡単に作成するには
 3) もめ事の種になる証明書作成費用
 4) 証明書を作成しないで済む方法

5. 日本の公的保険を持たない患者の診療―自費診療について

 1) 自費診療とは
 2) どのような人が自費診療となってしまうのか?
 3) 民間会社の保険と国民健康保険など公的保険との違い
 4) 自費診療の費用はどのように決まっているのか?
 5) 保険点数10割以下の自費診療を取り入れている医療機関は
                        あるのか?
 6) 自費診療の費用についての問題点


【10】 診療を始めるための準備

【11】 「お金が払えない」と言われたら

1. インフォームド・コンセントを徹底させよう
2. どこまで医療を行うべきか?
3. 自費診療の場合なら
4. ジェネリック医薬品の活用
5. 分割払い 6. ディスカウント
7. 外国人が使える制度の利用

【12】 帰国を希望した場合

1. 現地への紹介状
2. 情報提供書の宛先―どこの医療機関宛に紹介すべきか?
3. 不法滞在になってしまっていたら
4. 航空会社への診断書
5. 重症患者を外国へ移送する民間会社の存在

【13】 患者が死亡した場合

1. 宗教による制限
2. 不法滞在者の遺体の処遇

【14】 エイズについて

【15】 その他、特に注意すべき事柄

1. 海外での医療の継続、関連事項についての依頼

 1) 予防接種
 2) 海外で行ってきた抗がん薬投与などの一連の治療の継続
 3) 避妊のための徐放剤(インプラント)の手術による摘出

2. 医学的に根拠の薄い診断書の作成を頼まれたら…
3. 保証人になってほしいという依頼
4. 保険証の不正使用
5. 海外にいる人を治療のために日本に呼び寄せたいと言われたら

【16】 外国人医療…今後の課題

■あとがき


おしっこのはなし

個数:
おしっこのはなし
賢い腎臓の役割を知ろう

[ 著 ] 北岡建樹
[ 発行年 ] 2014年7月10日
[ 分類 ] 腎臓 医学随想
[ 仕様 ] B5変形判 本文160頁
[ 定価 ] 本体1,800円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-14-7
[ 主な内容 ]
●尿はさまざまな情報が隠された健康のバロメーターである。本書は尿の役割と腎臓の重要性についてわかりやすく、楽しく解説した通読書。


序―おしっこに愛を込めて

 私たちは毎日5~6回はトイレに行き、おしっこをします。排尿という行為には、からだの中に溜まった尿を排泄するという解放感による一種の快感があります。しかし子どもの頃、朝起きてみると布団に大きな地図を書いてしまっているのに気がついて、なんとも言えない屈辱感を経験した思い出を誰でももっているでしょう。
 筆者は幼少の頃の、起床時の恥ずかしい粗相をした頃が懐かしく思い出されます。夢の中では不思議と、“ここはトイレではない”“尿をしてはいけない”という自制心がいったん働くのですが、あるいは汚いトイレだったりして思いとどまるのですが、違う場所に別のきれいなトイレがあって、ここでは排尿しても大丈夫なのだと、安心して気を許してしまったことが原因となるような記憶があります。そして思いきり排尿してしまってから、“これは夢だった”と気がついたときには、なま温かい液体の中に自分がいるということになり、すべては後の祭りというケースが多かったようです。赤ん坊はおしめに排尿しては泣き叫ぶのが仕事ですが、大の大人がおしめを当てなければならなくなるのは惨めで、情けなく、いやなものです。布団の中で、意に反して排尿してしまうのは、本人ばかりか、周囲の人にも困惑を与えるものです。しかしながら、高齢社会においてはこのような現実が日常的にみられるのです。これもお年寄りは赤ん坊に返るという生物の宿命かも知れません。また、お年寄りだけではなく、若い女性でも何かの弾みに尿をちびってしまうことを経験するといわれています。このような若年者ないし壮年の婦女子の尿失禁の悩みは大きな社会問題となっているそうです。
 健康な男性が便器の前で気持ちよく排尿する解放感は男ならではのものかも知れません。それよりもハイキングなどの際に、大自然の中で思いきり放尿する方が、もっともっと解放感があるのでしょうが……。因みに排尿するためにトイレに行くことを、英語では“nature calls me”すなわち、自然が呼んでいるというようです。
 このような排尿を意味する言葉、言い回しというのは国によりさまざまですし、職場によっては独特の暗号めいた言葉や隠語が使用されています。排尿そのものやトイレを意味する言葉にしても歴史的な意味があったりするわけで、一種の文化と言えるものです。それだけ排尿行為というのは民族の長年の習慣や風俗により培われ、日常生活に密着した事柄と言えます。
 女性の場合にはトイレの使用は、本来の目的の用を済ませるだけではないようです。連れションは何も男子だけの特徴ではなく、女子もお化粧や職場の噂話や秘密話のために連れ立っていくようです。排尿の時間よりも、このような目的で利用する時間の方が長いのかも知れません。トイレを利用することはこのように日常茶飯事の行為といえます。最近、タクシーの中のラジオ放送で聞いた話によると、女性がトイレに費やす時間と空間は貴重な思索の場、一息つける安心の場であるそうです。煩わしい家事や子どもの世話から精神的にも肉体的にも解放される貴重な時間であり、トイレは自分だけの専用の居住空間であると考えられているようです。男子にとっても最もくつろげる場所というのがトイレであるというのは、わが国の住宅事情の貧困化を表しているとも言えます。
 食事や睡眠などと同じように誰もが行う生理的、日常的な事柄にもかかわらず、大きな声で尿についての話題を公言することができないのは、やはり排尿行為、泌尿排泄器というのが不潔、下品、あるいは性器に関係があるという理由からでしょうか。長年の社会的な習慣や羞恥心による影響もあります。“下の話”というように、このようなことを話題にすると人格的に下劣な人と思われてしまう風潮があるのかも知れません。しかし、このために尿に関する悩み事があっても人に打ち明けられず、恥ずかしがって1人で悶々としているのでは困ります。
 健康な尿というのは決して不潔なものではありません。排尿は本来、気持ちのいい快感であるはずです。また、尿には健康に必要なさまざまな情報が隠されており、いわば健康のバロメーターとしての役割があります。毎朝第一番に排尿する尿をよく観察することにより、あなたの健康状態をキャッチすることができるのです。寝ぼけた目で無駄に便器の中に有益な情報を流し込んでしまわないことが大切です。膀胱に溜まった尿をただ無駄に排尿するだけではなく、自分の目でよく観察して、尿に現れた情報からきちんと自分の健康状態を管理していきたいものです。
 本書では、このような点から科学的な面より尿を考え、尿をつくる腎臓の重要性について知ってもらいたいと考えました。慢性腎疾患の予防のためにも、できる限り早期に自分の尿の異常をキャッチできるようにすれば、早期発見、早期治療も可能になると思われます。やや卑俗的な表現を用いたところもありますが、おもしろく通読してもらいたいという考えからですので、この点をご理解頂きたいと思います。
              北岡 建樹


目次


1 尿とは


・いばりなさんな
・少ないかな腎
・大は小をかねる
・うんこの弁
・CKDとは

2 腎臓の排泄機能


・魚や鳥のおしっこは
・腎の起源
・ヒトの腎臓
・中身を濃く
・クリアランスセール
・キンニクマンでは
・風が吹けば
・無駄には出さない
・週に2、3回も

3 腎の調節機能


・体液量調節の役割
・母なる海
・からだの中にある海
・二重の防衛体制
・なめくじに塩
・体液組成の調節
・循環血漿量の維持
・酸塩基の調節
・酸性食品とアルカリ性食品とは
・常識の非常識
・酸と塩基のバランス
・代謝・内分泌的な役割
・Epoch-makingなEPO

4 尿の異常症候


・尿の不思議
・尿色の異常
・尿量の異常
・寒いときにはなぜ尿が出やすいのか
・お茶と利尿作用
・乏尿と無尿
・乏尿と浮腫
・ストレス過剰の悩み
・利尿薬はやせ薬ではない
・排尿異常
・尿の回数が多い頻尿
・新婚さんに多い頻尿
・お尻の拭き方
・かみの助けを必要とする人間
・贅沢な拭き方
・かみ不在の時代
・尿のにおい
・危険なにおい
・つばを付ける
・尿とフェロモン
・尿の味
・アリのままに
・濁った尿の原因は
・ピンポンゲーム
・唐傘さして
・こんどうむ
・尿流の異常
・ちんちんが腫れちゃった
・なかなか出ないよ
・失神してしまう
・排尿後のブルッブルッ
・一緒に出せるか




5 尿検査


・尿医というのは
・尿検査を考える
・紙切れ1枚の診断
・隠してもダメ
・尿の採り方
・蛋白尿の原因
・起つと出る
・大量に出る
・血尿の原因
・血を見るぞ
・見えない血尿
・潜血反応
・尿沈渣
・尿検査の異常をみたら
・尿検査の応用
・ぴたりと当たる
・もう少し待って
・金髪がいいよ
・尿からつくられる薬
・おしっこ大量作戦
・生理活性物質

6 排尿異常とは


・排尿の姿勢
・排尿のメカニズム
・膀胱の役割
・水の流れのように
・おしっこの仕方
・おしっこの音
・しびん

7 排尿障害


・トイレが近い
・歳のせい?
・栗の実
・出ちゃったよ
・パンツが濡れてしまう
・どのタイプ?
・おしっこを途中で止められるか
・締まりが悪い…
・尿失禁防止体操
・継続は力なり
・おわりに―排泄行為と羞恥心
Q子と学ぶ 輸液の知識

個数:
Q子と学ぶ 輸液の知識
“なんとなく苦手”から“わかった!”

[ 著 ] 北岡建樹
[ 発行年 ] 2015年6月25日
[ 分類 ] 輸液 腎臓
[ 仕様 ] A5判・214頁
[ 定価 ] 本体2,000円+税
[ ISBN ] 978-4-907095-23-9
[ 主な内容 ]
●なんとなく難しくて毛嫌いされがちな“水・電解質”と“輸液”について、対話形式でやさしくわかりやすく、楽しく解説。
●新人看護師や看護学生に必携。
●“どうして点滴をしなければならないの”“輸液の中身はどうやって決めているの”など、日常の疑問に応える通読書。


はじめに…輸液事始め

 これから水・電解質と輸液療法というテーマについて、少しずつ勉強していくことにしましょう。
 水・電解質や輸液療法の知識というのは臨床の各科において重要であるといわれながら、なんとなく難しくて馴染めないとか、取っつきが悪いなどの理由で毛嫌いされているようです。確かに腎生理学や電解質の調節の内容を理解することはなかなか困難で、頭の中が混乱してきます。ところが臨床のどの科においても、病室を覗くとプラスチックバッグの点滴がぶら下げられている光景を目にします。
 輸液療法では、水・電解質代謝の知識を理解しているか否かにより、治療への効果や治療に対する取り組み方が異なってくるのではないでしょうか。なぜ点滴をしなければならないのだろうかとか、輸液の内容はどう決めているのだろうかとか、さらに実際投与している内容にどんな意味合いがあるのかなどを考えながら治療することが大切なのです。もちろん輸液を投与していきながら、副作用が出現しないかとか、治療の効果がどのようにみられるようになったとか、手技のうえで問題点がないかどうかなどを常にチェックしていかなければなりません。
 このような意識をもたないで機械的・事務的に点滴の準備をしているだけでは面白くありませんし、単に医師のオーダーに従って準備をしているだけでは向上性がありません。臨床の場では輸液療法というのはごく一般的な治療法であり、しかも治療効果の優れた方法であるにもかかわらず、医療ミスの多い分野でもあります。せっかくの治療で、逆に医療ミスによって状態を悪くしてしまうのでは元も子もありません。もしも配合のうえでおかしいと考えられるような場合に、水・電解質代謝の知識を理解していれば、輸液のミスあるいは医療事故を未然に防ぐことも可能かも知れないのです。
 常に電解質のことを理解していれば、輸液の内容についても考えながら意味づけられるわけです。億劫がらずに勉強していきましょう。このため、臨床の場で必要な水・電解質や酸塩基平衡の知識を、本書では対話形式により理解しやすく述べることを心がけました。少々冗長な部分もありますが、話をわかりやすくするために述べた部分ですのでご理解頂けたらと思います。
 そう堅苦しく考えないで、気楽に勉強していきましょう。
              北岡 建樹


目次


Ⅰ. 体液から始めましょう


【1】 体液というのは?

 1・体液の分布と区画
 2・体液量はどのくらいか

【2】 電解質というのは?

 1・電解質の役割
 2・濃度を表す単位
 3・mEq、mMなどの単位について
 4・アニオンギャップの意味

【3】 浸透圧というのは?

 1・浸透圧の意味
 2・オスモラールギャップ
 3・浸透圧と細胞のサイズ


Ⅱ. 体液・電解質について学びましょう


【1】 水・電解質の出納について

 1・水分の調節
 2・Naの調節
 3・Kの調節

【2】 腎機能の評価
【3】 GFR以外のクリアランスの使い方
【4】 体液量の異常

 1・体液量の減少~脱水症
 2・体液量の過剰~浮腫

【5】 血清電解質の異常

 1・血清電解質の組成
 2・Na濃度の異常
 3・K濃度の異常





Ⅲ. 酸塩基平衡について学びましょう


【1】 酸塩基平衡というのは?

 1・酸とは? アルカリとは?
 2・緩衝系(バッファー)の役割
 3・呼吸による調節
 4・腎臓による調節
 5・Henderson-Hasselbalchの式
 6・Kと酸塩基平衡の関係

【2】 酸塩基平衡異常の臨床

 1・酸塩基平衡異常の診断
 2・酸塩基平衡異常の分類
 3・症例提示


Ⅳ. 輸液療法について考えましょう


【1】 輸液の適応とは
【2】 輸液剤の種類

 1・水分補給輸液剤
 2・電解質輸液剤

【3】 輸液療法の実際

 1・輸液療法の計画
 2・栄養輸液法の選択
 3・高カロリー輸液とは?


編集協力 日本医科大学名誉教授 飯野靖彦
2018年10月 新刊追加